第8話小さな違和感
肌が少し弱い娘には保湿クリームは欠かせない。
そして肌に優しいボディーソープ、シャンプーにリンスと迷う事なく次々と買い物カゴへと入れて行く。
そして次は下着と衣服である。
娘には少し高くても肌に優しい素材のものを、私のは適当に安物の下着を見繕って行く。
私はトランクケースに入れて来た物だけでとりあえずは使い回して行けば良いだろう。
靴下、下着、シャツにズボンにスカート、長袖に上着と二着ずつ入れていくと気が付けば当初は多過ぎると思っていた3万円ギリギリになっていた。
そしてレジへと向かうと丁度お菓子とジュース、そしてカップ麺と袋麺を買い込んだ高城と鳩合わせた。
「…………子供用ばかりじゃ無いか。足りなかったのならもう一万出すけど?」
「いいっ! 流石にこれ以上は貰えないっ!」
昔の私ならば迷うこともせず一万円を貰っていただろうしカゴの中は私と娘の物は逆転していただろう。
そう思うとあの時の私は本当に屑だったのだなとゾッとすると共に娘に何度抱いたのか分からない罪悪感を抱く。
「それよりも高城は社会人になってアラサーでもあるのに未だにお菓子やらカップ麺や袋麺を食べてるの? 別にお金が無い訳じゃないでしょう? 少なくとも三万円をポンと出せるくらいには。それに料理は上手い記憶があるのだけれど、それは気のせいか思い出補正だったのかしら?」
「生ゴミを出すのが面倒臭い、洗い物が面倒臭い、料理作るのが面倒臭い、そして美味しいし未だに飽きない。正に完璧な食品。それがコレらだ」
高城の話を聞き、私は高城と一緒にレジの列から出るとインスタントラーメン売り場へと直行した。
どうせこの調子では冷蔵庫はお酒保管庫、最悪物置と化しているであろう。
「もう、いつか身体を壊すよそれじゃぁ。面倒臭いというなら私が料理作って上げるから戻しに行くよほらっ」
「ちょっ、分かったから引っ張るなっ、引っ張るなっ!」
そして私はカップ麺と袋麺を棚へと戻すと種類の少ない野菜類からニンジン玉ネギジャガイモ、そしてソーセージに卵、どうせ調味料も無いだろうと基本的な調味料を買い物カゴへとぶち込んで行く。
しかし私は少しだけ引っかかる。
昔の高城はこんな奴じゃなかった筈であると。
少し面倒でも自炊をする様な人であった筈である。
中学生ながら夜遅くまで共働きの両親の代わりに、カップ麺や袋麺は栄養が偏ってしまうからと部活で疲れているであろうにわざわざ自炊する様な人だった筈である。
その小さな違和感は高城の家へ入ると確信へ変わるのだが、今は違和感こそ感じるもののそれだけであった。
「炊飯器は? 流石にあるよね?」
「炊飯器は流石にある。お米もあるぞ」
「はいはい偉い偉い」
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