第7話眩しく映った


高城に言われて私は気付かされたと共に、胸の中にすとんと落ちた。


私はこれからも不倫したことは後悔し続けるだろう。


けれども後悔してもその後悔からくる罪悪感に浸るのはもう止めようと、おいしそうにハンバーグを食べる私の娘、真奈美を見てより一層強く思うのであった。





「まさか、ここまで号泣するとは思わなかったぞ」

「ごべん。でも、うれじがっだじ、なっどぐでぎだんだがら、じがだないじゃない」


今現座私たちは食事を食べ終えて高城の車の中、真奈美は疲れたところでお腹いっぱいご飯を食べたからか今は爆睡中である。


因みに私はというともうあれからずっと泣きっぱなしである。


周りから奇異な目で見られた高城には悪い事をしたなと思うのだが自分でも涙を制御できなかったのだから許してほしい。


「取り敢えずドラッグストアに着いたから替えの下着とか化粧品とか最低限必要なものをこれで買ってこい。俺は俺で別の物を見てるから、買い終わったらスマホで連絡をくれ」


そして車は高城の家ではなく、ドラッグストアに着いており生活に必要な最低限な物を買ってこいと三万円渡された。


そんな高城の行動の理由が分からずただただ呆けていると高城が口を開く。


「メールや電話ならいざ知らず会ってしまって顔を見たら流石にこんな寒い中女と子供を外に放り出すだけの度胸なんか結局俺には無いんだよ。こんな自分が嫌になるんだが。ほら、早くいくぞ」

「で、でもお金………」

「良いから。どうせ今のお前は仕事どころかアルバイトもしてないんだろ?それにこれは善意では無くて所詮は偽善だ。ここで見捨てて自分のせいだと思いたくないだけだ」


そう言う高城の顔を見て私は胸がズキリと痛む。


結局こうなる事を見越して高城の済んでいるであろうアパートの扉の前で待っていたのだ。


なんと計算高く、そして屑なんだろうか?


そんな自分が嫌になるのだが、娘の為には屑にでも何でもなろうと今ならば思える。


そして私は高城の善意に漬け込む事にして目の前に出された三万円を掴む。


「良いの?」


そう自分に言い聞かして屑になったつもりでも、結局はなり切れずに今一度聞く。


「良いも何も、そうしないと俺は罪悪感で夜も眠れなくなるわ。それにお互いに全く知らない仲でもないから今更だろう。新しい仕事が見つかるまでは匿う覚悟くらいはファミレスに連れて行った時点でとうにできている」


高城は眩しいなぁー。


それが例え下心から来る言葉であったとしても、私には彼の姿が眩しく映った。



ドラッグストアに行くとまず探すのは娘に必要な物である。

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