第10話 対決

響に包まれて落ち着いた後、これからどうしようか、という話になった。

響は警察に連絡しようって言ったけれど、私はそれは最終手段に取って置きたかった。

何が目的で私の家の前にいるのか、話をしなくてはいけない気がした。

響は渋々、自分も同席する事を条件に、私の話を飲んでくれた。

私は再び自分の家の前に戻る。今度は響という好きな人を伴って。

車から降りると、拓也はまだいた。

響と手を繋いで拓也に徐々に近付いていく。

気付いた─

「桜子?!誰だよ、その男!」

「拓也には関係ないでしょ。」

「それより、拓也こそ何?人の家の前でウロウロと。」

「そうだ!桜子、俺たち婚約破棄なんてしなくて良いんだ!あの女妊娠なんてしてなかったんだ!」

「妊娠してなくても、浮気したのは事実だよね?ごめん、私もう拓也を愛していない。」

「何?桜子も一丁前の事言うようになったじゃん。自分の意見なんかなくて、俺の言いなりだったくせに。」

「はい。ストップ。」

響が声を上げた。

「お前さ、フラれた上に見苦しいんだわ。少なくとも俺といる桜子はちゃんと自己主張するし。桜子も、もうお前を愛してないって言ってるんだから潔く引き下がるのが男の役目じゃね?これ以上桜子を侮辱するのは許さない。ついでに、桜子に近付くのも許さない。」

「何の権限があってそんな事言ってるんだよ!」

「俺、桜子と結婚するから。だからお前はもう用無し。はい、さようなら。」

「桜子、本気か?!」

「うん。私、この人と一緒にいたい。だから、拓也は拓也の人生を歩んで。」

「くだらね。こんなくだらねー女、こっちから願い下げだわ。けっ。」

拓也は道端のゴミ等を蹴ったり、当たり散らしながら消えていった。

「これで一段落?かな?」

「いや、あいつが知ってる家に桜子を置いておけない。桜子、とりあえず何泊分かの荷物を準備して。俺の家においで。」

「え?そこまでしてもらうの悪いよ」

「悪くない。用心には用心を。ああいう粘着質なのが一番たちが悪いんだ。」

「響…ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて。」

図々しいかな、と思ったけれど、確かに拓也に知られている家で1人生活するのは、少し怖い。

告白もしていない思わぬ形で同棲?同居?がスタートしてしまいそうな私達。

待っててね、響。

明日のデートで必ず告白するから。

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