第8話 突然の告白
定時に仕事を終わらせ、エントランスに向かうと、そこには本当に矢野さんの姿があった。
「お待たせしてしまってすみません!」背後からかけ足で近付くと、振り向いた矢野さんは、何てことない風に「いや、俺も今来たところ。」と優しげに笑った。
ふいな笑顔に思わずキュンとしてしまったが、
「矢野さんは人生の師匠、矢野さんは人生の師匠。」
と心を落ち着かせた。思えば初対面こそ何だ、この人は?!と思ったが、それ以降の矢野さんはすこぶる優しいし面倒見が良い。年の離れた妹か弟でもいるのかな、とふつふつと興味が沸いてきて、直接聞いてみる事にした。
「矢野さんて、年の離れた妹さんか弟さんいます?」
「は?何いきなり。残念だけどいないよ。強烈な性格してる姉なら1人いるけど。」
「意外ですね。」
「そう?」
「はい。面倒見が良いので年の離れた妹弟がいるのかと思っていました。」
「俺、誰にでも優しくもないし、面倒見、良くないよ?」
「え?」
「天野さんだから気に掛けてる。」
「えっと…それは…妹的な。」
「あー、もう。勘弁してよ、1人の女性として気になってるんだよ。でも、天野さんの事情は分かってるつもりだし、ゆっくりと距離縮めていけたらなぁと思ってこうやって誘ってる。って手の内全部バラす羽目になってるし。」
前髪をくしゃっとさせ、少し赤面している矢野さんにびっくりする。
「えっと…なんで私なんですか?」
「笑顔が可愛い。凛としたところと、か弱いところのギャップを守ってあげたいと思った。後、その可愛い笑顔を俺だけに向けて欲しいと思ってる。」
「あ、ありがとうご、ざいます?」
私まで真っ赤だ。
「返事はいつまででも待つから。今は、俺の気持ち知ってくれてるだけで良い。」
「はい。」
「じゃ、気を取り直して飯行くか。」
といつもの調子の矢野さんに戻る。
私も合わせていつもの振る舞いをする。
2人並んで歩く道は、少しの気恥ずかしさを残しながら進む。
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