第7話 再会
矢野さんとの一件があって以来、私は水を得た魚のように息を吹き返した。
ご飯が美味しい。
仕事にやりがいを感じる。
読書も楽しい。
私の日々はそれだけで充分過ぎる程に充実していた。
落ちてしまった体重も戻り、何より、拓也の夢をみなくなった。
これでやっと、拓也との事を過去に出来た気がしていた。
そんなある日、仕事中に、「H・Iホールディングスの矢野と申します。11時に開発部
部長の田辺さんと約束をしているんですが。」と、
颯爽と矢野さんが現れた。
一瞬、ポカンとしてしまったが、矢野さんはお仕事で来ている。私も仕事モードへすぐに切り替え、内線で開発部へと繋いだ。
「矢野様。お待たせ致しました。すぐに開発部の者が参りますので、少々お待ち頂けますでしょうか。」
「元気そうじゃん、天野さん。」
「あ、はい、お陰様で。」
「今日、夜空いてる?あ、もう行かなくちゃ。19時にエントランスに迎えに来るから。」
と言って、開発部の人達と合流して行ってしまった。
えーーー?!なんて強引な人なの?!
でも。矢野さんは最初から強引だったな、なんて思い返していると、会話が聞こえていたのか、隣の志乃ちゃんが、
「桜子ちゃん、矢野さんといい感じなの?!」と目をキラキラさせて話しかけてきた。
「そんなんじゃないよ。強いて言えば、人生の師匠?かな?」と微笑んで私は仕事へ戻った。
隣で志乃ちゃんは謎めいた顔をしていたけど、まだ私には恋はこわい。
それが本音だった。
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