第3話 合コン
まただ…拓也を夢で思い出して涙を流して起きるのは何回目だろう。
はやく切り替えなくちゃ。拓也はもう私のものじゃない。私もまた、拓也のものでもない。
涙を拭って、顔を洗いに行く。洗面台に映ったのは今日も酷い顔。
情けない事に、拓也から婚約破棄を申し出されてから、食欲が落ちて体重が5キロも落ち、夢見も悪く、不眠気味で顔色が最悪だ。
でも、これでも一応企業の顔の受付の仕事をしているからには、多少厚化粧をしてでも平静を装おわなければ。
例え会社中に婚約破棄の事が知れ渡っていたとしても。
「しっかりしろ!桜子!」と自身の頬を叩き、今日も出社の準備をする。
「おはよー、桜子ちゃん。」
「おはよう、志乃ちゃん。」
彼女は、同期で同じ受付の仕事をしている志乃ちゃん。明るくて朗らかな笑顔が素敵な女の子だ。
「桜子ちゃん、今晩暇?ご飯一緒しない?」
自分1人ではなかなか食欲が湧かないのでその申し出は有難かった。
「うん、大丈夫だよ。楽しみにしてるね。」
仕事終わり、志乃ちゃんに連れられて来たお店は、オシャレなカジュアルレストランで、店内に入ると、私達以外にも数名の男女がいた。
「え?!志乃ちゃん?!」
「ごめん!桜子ちゃん!今日実は合コンなんだ。その、何て言うか、桜子ちゃんにははやく前を向いて欲しくて…。」
「志乃ちゃん…気持ちは嬉しいけど、私、当分恋愛は…「すみません。そこ!入口邪魔なんですけど!」
現れたのは、長身に大きなキャットアイが印象的な男の人。
「あ、すみません、」
「ごめんなさい!」
慌てて道を譲ると、奧の男の人から「おー、遅かったじゃん、響!こっちこっち!あ、志乃ちゃんとお友達も着いたの?こっちだよー。」
(え…あの人も一緒?!)
「桜子ちゃん、今日のお代は私がもつから、ね、お願い!」
(今更帰るなんて言えないよー。)
「お代は大丈夫だよ、ちゃんと出席するから…。」
「ほんと?!ありがとー!さ、あっちだって、行こっ。」
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