第5話 気付きそうで気付かないことって意外と馬鹿が気付く

「その化け物になってしまった人に養分がいかないということは、

一度化け物にされてしまったら

死という選択しかない・・・と?」


私の背後から耳元に顔を近づけて「君、頭良いね。」と囁いてくる。


「じゃあ、今までの話を総合すると?」


彼は私の正面に戻ってきて、素敵な笑みを浮かべて聞いてくる。


わかっていた。

この男に助けられた時点で、

この話を聞いた時点で、

私に与えられている選択肢は一つ。



「ただの人間である私はこの事情を知ってしまった。

もし、いつか私が悪い能力者と組むとしてもどうせ化け物にされて死ぬのだから、

悪い能力者としては常に

「二つの世界が存在する」という事実の口止めは完了している。

逆に言うと、

この事情は大っぴらにされては困ることとも言える。」


我ながら清々しいほどに頭が冴えている。

だが、情報量に押しつぶされかけている。


だって、1月の夜中の森の中、そもそもなんでこんなところに来たのかも、

もう忘れてしまいそうだから。


「能力者であるあなたは

私を化け物にして殺すか、普通に殺すか、

悪い能力者ではないと言うのなら化け物を倒すための仲間にするか。

おおよそ選択肢はこの三つでしょう。

そして、私の選択肢は・・・・。」


彼は嗤った。

やはり綺麗な顔で笑うより、よっぽどその方が似合っていた。


「命乞いをすること。」

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