第3話 人気者っていつの間にかそこにいる

「あの、能力者って人と変わらないんですよね?」

長い槍を回しては投げて遊んでいるこの男は

「うん。」と話聞く気なさげに言う。


「化け物が出てくるのとなんの関係が?」

「あぁ・・・。それはね~・・・あら?」


何も見えない森の奥闇に眼をやった彼は小首をかしげた。

何も見えない。

それすなわち、


「何が来ていても見えない。」


やっぱり多少は動揺しているようだ。

頭で言ったはずの言葉が口を突いて出てきてしまった。

さっきの化け物よりかは小さいが、数が多い。


「あらー。俺、人気者だねぇ。」

「え、あんたのせいなの?」

「うん。」

ふざけんな。そう言おうとしたとき、彼は槍を構えていた。


だが、身構えているわけではない。

彼は幼子でも見るような目で化け物を見つめ、

子どものボール遊びのような感覚で槍を投げた。


それはきれいな線を夜空に描いた。


とても長い時間に感じた。


冷たい空気が体を循環していく。


化け物も私たちを襲うことなく、それを見つめた。


そして、奴らの足下に落ちた槍は

「やっちまえ。」

彼の一言で、深く地面に入り込み、土地を切り裂いた。

切り裂いた土地の距離、およそ1km。

化け物からすれば、気付いたら落ちていたという感覚なのだろう。


「それ、能力者界の入り口だから。殺さないだけありがたく思ってよね。」

これ、入り口なのか。

私は遠目から切り込みの中を見てみる。

「・・・っ!!」

ぞっとするほどの闇。こんなところに落ちたら死ぬより怖い。


「まぁ、でも。」


彼は地面に入り込んだ槍を抜きながら呟いた。

完全に抜けると、地面は元に戻っていた。

1kmすべて。きちんと。

今の衝撃で倒れた木々すらなぜか元に戻っていた。


「あっちでは殺されるかもしれないけどね。」


彼の不敵な笑みは私の今後を考えさせるにはあまりに十分だった。

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