第2話 説明は長いと嫌になる

ごく普通の人間界のすぐ隣にある「能力者の世界」。

その入り口は見つけてしまえば、手を伸ばすだけですぐに入れてしまう。


本来、人々はその世界に気付くことなく生活を続けていたはずなのだ。

しかし、能力者には欲深いものが多く、「強さ」を求めた。

故に能力者は人間界へと足を踏み入れるようになった。


能力者は人々と何ら変わりは無い。

見た目も知能も心も。

だから、馴染んだ。気付かれない。

決して、気付かれないまま人々を食らった。


そうして強くなった能力者を見習い、

また一人また一人と能力者は人間界を踏み荒らしていった。


逆もまた然り、人間だって欲深い。

「あいつがうざい。」「あいつが嫌い。」「死んでしまえば良い。」

そんな感情により、能力者の世界を探した。

強さを手に入れるために、自由を手に入れるために、欲望のままに。


そして、能力者と手を組む人間が現れた。

あぁ、頭のいい君ならわかるはずだ。

手を組む?違うな。

能力者にとって人間など餌でしかない。

人間は食われていった。呪われていった。

 

ここで勘違いしないでほしいのが、人間も能力者もそんな輩だらけではない。

善人はいる。

ただ、善人の人間ではこの事態は気付かない。

だから、止めることもできない。

つまり、この事態を救うことができるのは

「善人の能力者」もしくは

「善人ではなくとも何となくこの状態に疑問を持っている能力者」というわけだ。


決め顔でこの長文を言い切った私を助けてくれた男に私が言った言葉。

「説明長いんですけど。」

「助けてやったのにその言い方はどうなの?」

助けてやった上に、この状況の説明までしてあげたのに。とか

ぶつくさぶつくさ拗ねた顔で言っている。

「なんか、めんどくさそうな人に助けられた・・・。」

「なんか言った!?」

「いえ、何も。」

ここから私たちは長い付き合いになるとはまだ知らない。

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