第2話 魔王、パンツ見られる
魔界と人間界の境にある荒野。
何百年もの間、人間と魔族が戦いを繰り広げている主戦場。
ここでならば魔王の全力を出しても影響が少ない。
魔王軍は戦いに巻き込まれて仲間に被害が出ないように兵を下げた。
その様子を見ていた人間側も、兵を引き下げて少数精鋭の勇者パーティだけを送り込んだ。
「気をつけなさいよ勇者。あっちからとんでもない魔力を感じるわ」
「ふむ。女剣士の言う通りじゃわい。ワシの魔法を遥かに超える恐ろしい力の波動……幹部クラス…いや、まさか」
「お気をつけください勇者様。聖女の癒しの力でも死んでしまっては回復出来ません」
男二人。女二人のパーティ。
魔法剣士の勇者、女剣士、老賢者、聖女とバランスの取れたメンバーになっている。
そして、彼らパーティに肌を刺すようなプレッシャーを与えていた存在が遂に姿を現した。
宙に浮くその人物の頭部から伸びる二本のツノ。長さも太さも十分で、魔族としての格を現している。今までに敵対したどの幹部よりも立派だった。
鎧ではなくドレスのような服を着てマントをなびかせているが、その素材はドラゴンの飛膜やグリフォンの体毛といった最高品質の魔物の素材が使用され、簡単にダメージを与えられそうにない。
「ほぅ。人間にしては中々……だが、」
舌舐めずりし、魔王軍を手こずらせてきた相手の実力を測る。
最前に立つ若い男以外は幹部達より少し劣るくらいの力しか感じられない。
わざわざ自分が出向かなくても良かったのかもしれないと魔王は思った。
「妾は魔王。魔界に生きる魔族の王である。頭が高いぞ人間?」
声に魔法を乗せる。
たったそれだけの行為だというのに圧倒的な魔力の暴風を受け勇者以外のメンバーは膝を地面につけた。
屈してしまったのだ。本能的な恐怖に。
ーーーつまらんな。
魔王はそう思った。
たった数人で魔族の精鋭部隊、ラミアやアラクネ、ハーピーの群れを撃退した人間の中から選ばれた猛者達だと聞いていた。
それが、攻撃でもないただの挨拶でこのザマである。
「どうした勇者? あまりの恐怖に足がすくんでいるのか?」
ただ一人立っている勇者はコチラを見上げたまま動かない。
剣も抜かずに、ただ立ち尽くしている。
膝をついていないと言うことは他の者より実力が高いのだろうが、それだけではまだ魔王には届かない。
「ーーー、」
勇者が口を開こうとする。
初めての魔王と勇者との会話。
一体、どのような言葉を話すのか魔王は気になっていた。
魔族への恨みか、魔王への啖呵か。それとも命乞いの類いか。
「ーーー白の紐パン」
それが勇者の第一声だった。
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