第4話
右手が白刃の軌跡を残しながら閃く。
「そい!」
目に焼き付くW字の残像。
一瞬の内に、地震虫の左前肢は三つに切断されていた。
狙い澄ました一撃を、僅かに顔を傾けて躱し、前転で虫の胴の下へと潜り込んだ。そして左手の雲角を首目掛けて投擲する。
振動する刃は、地震虫の首に静かに潜り込んだ。
刹那の後、雲角は激しく放電。地震虫は白目を剥いてその場へ崩れ落ちた。
ここまでにかけた時間、僅か三秒。
これが彼の必殺の型。
四分六でダメージを与え、距離を詰めた後雲角で仕留める。
流水の如き滑らかな動きを、地震虫は阻むことさえできなかった。
血振りを終えた
その返り血に濡れた後ろ姿こそ僕の頼れる同僚、己の生命力をコントロールする
一方、
初手を仕掛けたのは
長くしなやかな尾で地を打ち、一気に虫との間合いを詰める。
空中で一回転、迎え撃つように突き出された前肢二本を尾の一撃まとめてへし折った。
呆気に取られた顔のようなものを見せる地震虫。
その顔に目もくれず
また尾で地を打ち、飛び上がる。
一回転、二回転、三回転……六回転。
重力を忘れたかのような滞空時間と回転数。
回転で得たエネルギーを、しならせた尾から解き放つ。
「……せいッ!」
一閃。
凄まじい速度で尾を振り抜いた。
落下する彼女を捕らえようと開かれていた下顎は、その一撃で千切れ飛んだ。
痛みと驚愕で目を見開く地震虫。
嗚呼、驚いだだろう。信じられないだろう。捕食対象でしかなかった女性に、下顎を奪われたのだから。
血と涎を撒き散らしながら転がった下顎は髑髏嬢の足元で止まり、彼女と彼女の豪奢な服に盛大なシャワーを浴びせた。
飛沫が口の中に入ったのだろうか。愕然とした表情を浮かべている。
そんな少女を尻目に、
相方を失った上顎を掴み、身軽に体を引き上げる。
そのまま上顎の上へしっかりと両足で立ち、甲皮に覆われた尾を矢のように引き絞った。
極限まで緊張させた尾の筋肉に震えが奔る。
空を裂く音。
次いで何かを破壊する音。
向かって右、地震虫の左目は貫かれていた。
虫の左目を破壊・貫通した尾は脳にまで達し、地震虫の生涯に終止符を打った。
一方僕は、隊長と濁天さんに二対六の勝負を挑んでいる連中に砲撃。
二人の実力なら、お節介になってしまうかもしれないが、遠距離攻撃が僕の仕事であり、唯一のアピールポイントなのだ。
隊長と
故に彼らは己の五体で肉弾戦を挑む。
手持ち武器と肉体を多用する二人の戦闘スタイルは、必然的に
このチームのアナである
僕の放った砲撃が、戦力差二対六を二対三にまで削いだらしい。
二人は鮮やかなコンビネーションで残りを圧倒した。
隊長が竹槍を使い、棒高跳びの要領で三匹の頭上へ行く。
彼の戦闘向きでない聖別特典、それは「発光」
その猛威と脅威が地震虫を襲う。
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