おまけ「その後の三人」

 ゴンゴンゴン!

 ガチャ!


 大きなノック音の直後、返事を待たずに扉を開けたのはあかねである。


「あ、たいよー!オフロどーする!?ゴハンは!?なにか作ろっか!?」


 あかね帰宅困難者迷える子羊となった太陽たいようを部屋に招き入れ、自身の住む3LDKの寮の部屋の中で使用していない部屋を使わせていた。


「いやいや、開けんの早いだろ。返事してから開けてくれよ。つかノック強い」


「えー!?フツーだよ!?それにここはボクの部屋なんだし開けてもいいっしょ!?」


「いや、今は僕が借りてんだから配慮してくれよ…」


「あははは!ごめんごめん!それよりゴハンとオフロは!?」


 茜は悪びれる様子も反省する様子も皆無だった。


「ったく…飯は準完じゅんかん自寮じりょうの食堂に行ってくるよ。フロはいい。着替え持って無えし」


「えー!?ダメだよそんなの!わかった!ゴハンはボクが作ってあげる!コロッケでいいよね!?昨日トンカツ作ったんだけど、油捨てる前にもう一回揚げ物やりたいんだよね!着替えなら貸したげるよ!ダイジョーブ!たいよーが着てもカワイイ服あるから!」


「いや意味わかんねえよ!僕が着てもカワイイとかなんなんだよ!…あ、でもゴハンは貰うわ。色々サンキューな」


「うん!あ、この箱に入ってる服から着替え選んでね!パンツはないけど…ボクは材料取ってくるから先にオフロどーぞ!」


 茜はそう言うと完全寮にある地下の食物貯蔵庫へ行った。

 何を隠そう、完全寮の地下には食物貯蔵庫がある。そこには各種新鮮素材が常時保管されており、寮生はそれらを好きに使っていいことになっている。

 野菜、魚、肉、果物、スイーツ、駄菓子に至るまで、そのバリエーションは高級セレブ百貨店デパート庶民ノーマル量販店スーパーも顔負けの品揃えである。なお、ここにある食材は廃棄されることはなく、痛む前に剣ヶ峰財閥により海外の食料不足の地域へ輸送されるので、無駄になることは一切ない。

 そして、今さらだが、太陽の云った準完とは準完全寮、自寮とは自由寮のことである。


「いやいや、なんだよこれ…こんなの男が着れるわけあるかよ…勘弁してくれよ」


 太陽は独り言を呟いていた。

 茜の言った箱の中にはどう考えても太陽に似つかわしくない、女の子向けガーリー部屋着ルームウェアが入っていた。中にはキグルミタイプもあったが、セクシー系は1着もなかった。


「普通にジャージとかないのか…あ、これは何とかいけそうだ……」


 太陽は独り言を呟きながら茜のことを振り返っていた。


(水無月みなつきさん、僕が嘘いていたのわかっていたんだな…)


 そう、茜は太陽が嘘を吐いたことに気がついていた。


 ここで、時間タイム遡行リバース


 時は、遡ること15分前―――


「あのさ…たいよーさ…さっきのお腹痛いって…アレ、嘘だよね?」


「えっ!?なな、なんで!?」


 茜の言葉に太陽の声は裏返っていた。


「あはは!やっぱりね!」


「え、いや…ははは」


 太陽は嘘を吐くのが割と上手いほうなのだが、バレるとそれを誤魔化せないタイプである。


「……ありがとね」


「えっ!?」


「だーかーらー!ありがと!」


「え、あの…なんのこと?」


 茜の言葉の意味がわからなかった。

 太陽はであるが故に女性の心を読むのが下手なのである!


「もう!たいよーってホントだよね!ボクが脱がないで済むように嘘を吐いたんでしょっ!?」


 半分正解、半分不正解である。

 確かに太陽は茜の裸体を見ない(本当は見たかったが!)ためにどうすればいいかも考えていたが、あの時は股間のバベルの塔を隠すためにどうすればいいのかを最優先に考えていた。


「あ…いやそれは……」


「最初は気がつかなかったんだけど、部屋に戻って気がついたんだ。たいよーがボクのために負けてくれたんだって…たいよーが他の男共と違っててホントに安心した」


水無月みなつきさん……」


 二人はなにやらいい雰囲気である…

 いけ!太陽!押し倒せ!絶好の押し所チャンスだ!


(すみません!ナレーションの人!少し黙っていてもらえます!?)


 太陽は心の中で俺に突っ込みをいれた。


「この話は…たいよーだから言うんだよ?恥ずかしいから誰にもナイショだからね?…ボクってその…おっきいじゃん?」


「う…いやそれは……」


 の殆どは女性からこういう話をされると何も言えなくなる!

 童貞判別チェリーチェックに使えるので、もし女性の読者がいたら試すといい。責任は取れないがな!


(だから!黙ってもらえますか!)


 また突っ込みを入れられたので、茶化すのをやめよう…


「あはは…いいよ、わかってるから。あたし中学に入るまではだったのに中学で運動部に入ってから急におっきくなっちゃって…それで男がジロジロ視てくる様になって…だから男ってみんなエロくて嫌いだー!って思ったの…」


 茜は太陽に本音を語った。

 茜のエロい男が嫌いな理由は、思春期の頃に男共に胸を、を視られたことが原因であった。


「でもさ…たいよーは初めて会った日からボクの胸を全然見ないで目を見て話してくれたじゃん?あの時、ボク本当に嬉しかったんだよ?………もーこの話は終わりね!じゃこの部屋好きに使っていいからね!」


「あっ!ちょっ、水無月みなつきさん!ちょっと待って!」


 太陽は茜の腕を掴んでを引き止めた。


「あ……なに?どーかした?」


「ごめん…全っ然関係ない話してもいいかな?」


 まさかの発言だった。太陽は腕を掴んでまで茜を、女の子を引き止めたのにも関わらず雰囲気をぶっ壊す発言をした。

 しかし、茜はそれを快く了承した。

 そして、太陽は茜の寮の部屋、その玄関を潜った時から気になっていたことを訊いた。


水無月みなつきさん、なんか?」


 それは胸の事ではなかった。

 それは器の事ではなかった。

 それは…


「あーっ!?たいよー今それ言う!?ボクが恥ずかしいの我慢して胸の話をしたのに今それ言う!?」


「ごめん、でも気になって…水無月みなつきさんって身長166センチだよね?それにしては何か小さいって言うか…さっき部室で会った時より随分と身長差が……」


「それはボクの最高機密トップシークレットだからね!他の男共には絶対に誰にもナイショだからね!部屋に入れたのはたいよーをからだからね!わかった!?…返事は!?」


「え…ああ、うん!いや、はい!わかりました!僕と水無月みなつきさんの友情に誓って誰にも内緒にします!」


「うんうん!それでいーよ!」


 茜はそう言うと太陽に貸した部屋から出ていった。


(水無月みなつきさん…だから絶対不可侵領域ノータッチエリアにブーツを指定したのか……)


 茜の最高機密トップシークレット

 それは、茜自身が166センチと公言している身長が実際には151センチしかないことである。

 そしてそれは、室内に入ってしまうと露呈する。

 そう、太陽も気がついた様に読者諸君も気がついただろうが、茜のブーツは巧妙に15センチも上げ底にされた秘密加工靴シークレットブーツなのだ!

 プールの授業で一緒になる女子達の間には茜の偽りの高身長ライ・トールは周知の事実であったが、男達は茜の親族を除いて誰もそれを知る者はいない。

 茜は自身の胸の大きさを少しでも誤魔化すために高身長を装い、身長と胸囲バストの比率を低くしていた。

 これはつまり、こういうことである。

 85/166…約0.51

 85/151…約0.56

 カップ数なども加わるため一概には言えないものの、この数値が高ければ高いほど胸が際立つ体型となる。

 ちなみ霧子きりこの数値は以下の通りだ。

 90/169…約0.53

 そう!茜は身長を抑えたトランジスターグラマー体型のため、サイズ的には劣る(?)霧子よりも胸が際立つ体型なのである!


 以上で茜と太陽の話は終わりだ!


 では、時間タイム遡行リバース解除!


 ―――太陽が茜の部屋で着替えを選別していた頃、霧子は理事長室で今日の職務をていた。


「…ちっ!あの太陽どうてい…なんなのよ…まったく……」


 霧子は不意に太陽のことを思い出して舌打ちをした。


霧子きりこ様、如何なされました?」


 霧子に声をかけたのは霧子の専属使用人メイドであるかすみだ。

 桐ヶ崎きりがさきかすみ…彼女は霧子が必要ないと言わない限り、トイレの個室内以外を除けば何時如何なる場面に於いても霧子の傍から片時も離れることはない。

 通称・影の使用人シャドウ・ストーカーと言われている。

 影の様に寄り添い、ストーカーの様に付いて回ることからそう呼ばれているが、これを本人に言うと激昂するので注意だ。

 シャドウは良いが、ストーカーが気に入らないらしい。

 自称は影の守護神シャドウ・ガーディアンらしいが、これは中学時代に名乗った物であり、これを本人の前で言うと赤面しながら激昂するので注意だ!

 ちなみに、霧子と霞は同級生クラスメイトで隣の席なので、授業中に霞が居ても何の問題もない。霞は女子高生使用人メイドなのである。


「別に何もないわ…あー、苛々いらいらする!」


霧子きりこ様、何もないという態度ではありませぬが…またですか?」


 あの男とは無論、太陽のことである。


「…ええ。あの太陽どうてい、私に懇願すればここに泊めてあげようと思っていたのに、あかねちゃんの部屋に泊まっているのよ…まったく、なんのために電車とバスを停めさせたと思っているのかしら」


「クスクス…霧子きりこ様はあの男が好きなのですね?」


 今、霞はという言葉を発言した感じに描かれているが、これは比喩である!

 クスクスと笑うという比喩である!

 クスクスと言ったのではないから勘違いせぬように!


「誰があんな男!あんな変態童貞男なんて好きなわけがないでしょう!」


「そうですか?…なるほど、それは失礼致しました」


「…かすみ、あなた何かたのしそうね?」


 霧子は霞の態度と雰囲気が愉しそうだったのを見逃さなかった。


「いえ別に……いえ、やはり愉しいです。ワタクシは霧子きりこ様が恋をしているのを見るのが堪らなく愉しいです」


「はあっ!?誰があんな太陽どうていに恋なんか…」


「ワタクシは一言も新入にいり殿とは申していませんが?」


「えっ!?あ……ふふ、そうね。かすみ、あなたにだけは嘘は吐けないわね」


「クスクス…霧子きりこ様、ですか?」


 霞は霧子にいつから太陽を好きになったのか訊いた。


「…私にもわからないわ。気がついたらとしか言い様がないわね」


「そうですか、わかりませんか。…霧子きりこ様、それが本当の恋です」


 そう!恋とはそういうものなのだ!

 恋とはするものではない!

 恋とは知らぬ間にしているものである!


 否!!!


 恋とは知らぬ間に落ちているものである!

 恋慕とは、知らぬ間に育まれ、意識した時に初めてに気がつくのである!

 そして、意識した時にはもう遅い!意識した時には既に堪らなく好きになっているものなのである!

 それがだ!

 それがだ!

 それがだ!


「恋ね…この私にも理解出来ないものがあるなんてね……」


「人間ごときに万物を理解する事は不可能です。例えそれが霧子きりこ様であっても」


「あなた今、私に向かって人間と言ったわね?かすみ、その発言、高くつくわよ?」


「これは失礼致しました。発言を撤回はしませんが、謝ります。すみませんでした」


「別に良いわ。次回の太陽たいようの対戦相手は決まったし、そんな些末なことは気にしないわ。ふふふ、次の対戦相手、誰だと思う?」


「………まさかとは思いますが、ワタクシではありませんよね?」


 霞は霧子の表情で全てを悟っていたが、確認する様に訊いていた。

 それはあり得ないと思いながら、霧子がノーと答えるのを期待していた。

 …だが、やはりそれはあり得なかった。


「ご名答。次はあなたよ、かすみ


「………」


 霞は霧子に対して何も言わなかった。

 ここに、次回の対戦カード決定した。


 次回、新入にいり太陽たいよう桐ヶ崎きりがさきかすみ!!!


 ズガーン!!!※落雷のSE※


 製作未定!

 内容未定!

 かすみのキャラ設定の詳細も未定!


 では諸君、もしも次回作が作られた時にはまた会おう!

 きっとまた会えると信じている!

 この物語はまだまだ始まったばかりである!!!

 では、サラバだ!



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