第10話「まさかの結末…」

 新入にいり太陽たいよう水無月みなつきあかねの野球拳式クイズ対決は、9回裏、思わぬかたちでタイム状態となっていた。


 タイムの理由は太陽の股間にバベルの塔がそびえ立ってしまったからである。


太陽たいようくん?急にどうしたの?あなた大丈夫?…太陽たいよう?」


 霧子きりこは急に机に突っ伏した太陽を心配して声をかけたが、太陽からの返事はなく、思わず太陽を呼び捨てにしていた。


(大丈夫なわけない!ちょちょちょっ!近付かないで!良い匂いがして余計に…じゃなくて!バレちゃうから!やめて!お願いだから離れて!霧子きりこさん!)


太陽たいよう太陽たいよう、何か言いなさい。大丈夫なの?」


 霧子はさらに太陽に近付き、太陽の顔を覗き込む様にして顔を近付けた。

 艶があって綺麗な霧子の黒髪が突っ伏した太陽の腕と頬に触れた。


(霧子きりこさんの髪の毛、サラサラで凄く良い匂い…違う!そうじゃない!ダメダメダメダメダメ!あまり近付かれると思い出しちゃいますから!!!)


 太陽は近付く霧子の匂いと髪の毛が頬に当たる感覚に、霧子と交わしたを思い出していた。

 そして、太陽の股間のバベルの塔は益々その強度を増し、天に向けて高く真っ直ぐにそらを突き刺していた!

 以後のワードに関して先に読者諸君に謝っておく…ごめんなさい!

 もし女性読者が居たら尚更ごめんなさい!

 太陽の股間のバベルの塔の状態は…


 まさに状態になっていたのである!!!


 カチンコチンコとは、カチンコチンのチ○コである。

 太陽の股間のバベルは嘗てないほどにカチンコチンになっていた。


(ダメ!ダメ!ダメ!もうダメ!バレたら試合どころじゃない!つかむしろ試合をしてわけがない!なんなんだよ!野球拳式クイズ対決ってなんなんだよ!エロ目的以外の何物でもないだろ!なんなんだよ!男と女でやったら絶対だろ!おかしいってこんなの!)


 太陽は事ここに至って初めて野球式クイズ対決の異常さに気がついた。

 そう、野球式クイズ対決なんてものは異常である。

 野球拳要素を加えたのは部員に緊張感を与えるため?互いに精進するため?

 否!

 それはあくまでも建前であり、単純に面白いからという思いつきで作っただけである。

 そして、本来ならばその思いつきからして異常なのである。


太陽たいよう太陽たいよう!しっかりしなさい!もうタイムの残り時間はないわよ!太陽たいよう!」


 霧子は審判という立場でありながら太陽を心配して声をかけ続けていた。しかし、太陽はそれを悉く無視していた。

 太陽は股間のバベルの塔を鎮めることに必死だった。

 そして、一向に鎮まることのないバベルの塔を二人にバレないままこの場を乗り切ろうと画策した太陽はついに動いた。


「すみません!この試合は僕の負けです!勘弁してください!」


「なっ!?太陽たいよう!?」


「ひゃいよー!?」


 太陽の行動に二人は度肝を抜かれた。

 太陽は股間のバベルの塔を身体で隠すようにして土下座していた。


「ちょっと!太陽たいよう!一方的な試合放棄は認められていないわよ!負けを認めるのならばでサヨナラ負けになってからにしなさい!」


 霧子は太陽の敗北宣言を認めようとしなかった。しかし、そんな霧子に対して太陽は反抗するように言った。


「漏れそうなんです!」


「えっ!?太陽たいよう…あなた何を……」


「ですからお腹が痛くてやばいんです!もう本当に限界なんです!」


 太陽は霧子に嘘をいた。

 平時ならば霧子は太陽の吐いた嘘を瞬時に見抜いただろうが、この時の太陽の必死の形相と土下座という屈辱的な格好がそれをさせなかった。


「くっ!太陽たいよう…あなたって人は…さっき小休止インターバルは必要ないと言っていたでしょう!」


「すみません!でも本当に限界です!勘弁してください!」


 太陽はそれを言うと同時に、股間のバベルの塔を二人に見られないように身体の向きを変えてから立ち上がり、部室の扉の鍵を開けてパンツ一丁のままで部室を飛び出した。


「ちっ!ふざけないで!こんな結末は初めてよ!新入にいり太陽たいよう!戻ってきたら折檻よ!」


 霧子は部室を飛び出していった太陽の背中へ向けて言った。

 茜は飛び出していった太陽と、太陽に怒鳴る霧子の姿をただ黙って見ていた。

 こうして、新入にいり太陽たいよう水無月みなつきあかねの野球拳式クイズ対決の幕は下りた…


 それから暫くすると太陽が部室に戻ってきた。そこには既に茜の姿はなく、霧子一人だけがいた。

 霧子は馬術に用いる短鞭を持って対決用の脚を組んで腰掛けていた。


「あら太陽たいよう、存外早かったわね。の調子はもう良いのかしら?ふふふ…」


(う!やばい…メチャクチャ怒ってる…もしかして嘘いたのバレてる!?)


 太陽は霧子と野球拳式クイズ対決をする以前は、霧子の感情を読むことが難しいと感じていたが、対決をしたことにより霧子の表情や声のトーンでは察することが出来るようになっていた。

 霧子は微笑んでいたが、発する声とその表情は明らかに冷たく、机の上に腰掛けるすの姿はさながという雰囲気であった。

 太陽は霧子の微笑みに心臓を鷲掴みにされた気がして何も言えなかった。


「黙っていないで何か言ったらどうなの?それともまだお腹の調子が悪いのかしら?だとしたら無理せずにトイレへ行きなさい。…」


(ひいっ!何で区切って言うんですか!?)


 私はずっとここで待っているわ…

 その言葉を霧子がわざわざ区切って言ったことに太陽は恐怖した。


「…それともトイレまで付き添って欲しいのかしら?ああ、そうそう…お腹を壊しているのなら薬も必要よね?今すぐかすみに薬を用意させましょうか?ほら、かすみに電話しましょうか?ねえ、どうなの?太陽たいよう…ねえ?」


(怖い!恐い!コワイ!こわい!恐怖こわ過ぎる!!!)


 太陽は優しく話しかけてくる霧子が恐怖こわくて堪らなかった。

 ちなみに、霞とは桐ヶ崎きりがさきかすみのことである。

 え?誰かって?

 今回は皆までは言わないが、端的に言うと霞は霧子に仕える使用人メイドである。


「ほら、押すわよ?かすみに架けるわよ?いいのかしら?ほら、太陽たいよう…本当に押していいのかしら?」


 霧子は左手にスマートフォンを持って画面を太陽に見えるようにし、右手に持った短鞭を逆手に持ち替えて、画面に表示された発信という文字を右手ので押すことを仄めかした。


(こわい!コワイ!恐い!怖い!何で中指なの!?これ、絶対バレてるよね!?くそ!こうなったら…)


 太陽は霧子の言動と態度から自身が嘘吐いて試合を放棄したことがバレていると感じ、決心して口を開いた。


「すみませんでした!お腹が痛いというのは嘘です!ごめんなさい!」


 太陽は霧子に頭を下げた。

 さすがに土下座まではしなかったが、深々と頭を下げた。

 霧子が座る机より低く、霧子が組む脚より下に頭が位置するように、太陽は深々と頭を下げた。


「…やっぱりね。……良いわ。頭を上げなさい、太陽たいようくん」


「えっ!?」


 太陽は意外にも霧子があっさりとしていることに驚いていた。

 そう、太陽は霧子にもっと責められると思っていた。怒鳴られ、罵られ、鞭で打たれるのだと思っていた。しかし、太陽の想像は外れた。


太陽たいようくん、何を驚いているの?まさか私がこの鞭であなたを泣くまで滅多打ちにするとでも思っていたのかしら?それとも、あなたはそれを望んでいるのかしら?だったら…」


「いやいやいやいや!そんなことありませんから!あっ!?」


(白…!?)


 太陽は霧子の言葉に言い返しながら頭を上げたが、その際に霧子の脚の間からその先にあるものを見てしまった。

 一応説明しておくが、その先にあるものとは、霧子のパンツである。

 霧子はタイツを履いている上に、スカートの影に隠れているため、はっきりと見えたわけではないが、太陽は見えるそれを見た。


太陽たいようくん、今のは何?何かあったのかし…あっ!」


 霧子は太陽の声の意味に気がついて頬を赤く染めた。


太陽たいよう!あなたは一体何を考えているの!今は説教されているのよ!そんな時に私のスカートの中を…パンツを覗き込むなんて…あなたは本当に最低のクズねッ!」


「ちょちょちょっ!?クズってのはさすがに酷いですよ!僕だって見ようとして見たわけじゃないんですから!不可抗力です!それにチラッと見えただけです!色以外わかりませんでした!」


「色がわかるくらいはっきりと見てるじゃないの!もういいわ!今日は帰りなさい!今日はもうあなたの顔も見たくないわ!」


 太陽は完全に墓穴を掘った。

 そして、霧子の言われるがままに帰ろうとした時だった。


「…何をしているのかしら?」


「えっ!?」


「誰が服を着て良いと言ったのかしら?」


 太陽は当たり前のように審判の財布ジャッジマンズ・ポケットから着用物を取り出そうとしていたが、それを霧子に止められた。


「いや…水無月みなつきさんも着ていったみたいですし、僕も良いのかなと…」


「は?何を言っているの?さっきの試合は事実上あなたの反則負けなのよ。それも決着時のあなたは圧倒的敗者ノーヒットノーランどころか最悪の結末ルーザー・ルーズなのよ。着用物を着て帰って良いわけがないでしょう?」


「なっ!?」


 太陽は霧子の下した無慈悲なる裁定に驚きつつも、ある意味では納得していた。

 太陽は自身が敗北宣言をした時にある程度のリスクは覚悟し、こうなることは想定内だったが、内心では気が気ではなかった。


(やっぱりダメだったか…どうする…まさかパンツ一丁このままで電車に乗れるわけないし…空いてるかな…もし空いてなかったら…)


 ここで、時間停止タイムストップ


 今回は太陽が心の声で言った寮について説明しよう!

 この寮とは、私立剣ヶ峰学園の敷地内にある寮なのだが、所謂普通のとはやや趣を異にしている。

 私立剣ヶ峰学園には、完全寮と準完全寮と自由寮の三種の寮が存在する。

 まず、完全寮について説明しよう。

 これは剣ヶ峰学園のオリジナル奨学金制度である剣学オリジナル対象者が寝泊まりするである。

 その施設は充実も充実、まず玄関先は顔認証と声紋認証による二重のオートロックシステムがあり、各部屋の鍵は指紋認証と虹彩認証と物理的な施錠による三重ロック(ただし、物理的施錠を行う生徒は殆どいない)がされている。

 そして、室内は全ての部屋が3LDKである!3LDKである!しかもシャワー完備の浴室(6畳)がありながら、それとは別にシャワールーム(2畳)があるからまた驚きである!なお、トイレは洋式と和式が各1つずつ、計2つある。

 そんじょそこらの高級マンションにも劣らぬ施設を備えたその部屋を、剣学オリジナル対象者には卒業までの間、年365日(閏年は366日)の如何なる時であっても自由に使っていい権利が与えられる。

 広すぎる?

 確かにそうだな!

 しかし、その広さは伊達じゃない。なぜなら剣学オリジナル対象者は希望すれば家族も寮に住んでも良いのだ!

 これこそ、剣学オリジナルの凄いところである!

 親が貧困者であっても、子が剣学オリジナル対象者となることが出来れば家賃光熱費無料で家族同伴で寮で暮らせる。

 その間に親は仕事を頑張って貯蓄するなり借金を返すことなりに専念し、子供はのびのびと勉学に励むことが出来る。

 入寮した場合の通勤の不便さ?

 全く問題ない!

 剣学オリジナル対象者と共に入寮した家族の通勤通学は、剣ヶ峰財閥によってサポートされるので以前よりも楽になることが殆どなのだ!

 親の勤務地や兄弟姉妹の通学地によっては毎日ヘリ通勤になった例もある。

 しかし、そんな至れり尽くせりの剣学オリジナルにも嘗ては1つの問題があった。

 それは、なことである。

 意味がわからない?

 なら教えよう!

 剣学オリジナルがあまりにも至れり尽くせり過ぎるため、それに甘えてしまった親が怠惰に陥り、堕落してしまうという事例が数件あったのだ!

 子は剣学を無事に卒業して寮から巣立ったたのに、親は剣学オリジナル時代に味わった贅沢な暮らしから卒業出来ず、子の卒業後に親が破産したということが過去に何件か起きている。だが、この問題も霧子が初等部卒業時の卒業論文にて発案した親の人格調査プログラムにより解決した。

 この人格調査プログラムによって堕落の危険性を孕むと判断された場合、剣学オリジナル対象者の親であっても対象者と寮に同居することを認められない。ただし、剣学オリジナル対象者が申請し、それが承認された場合に限り、人格調査プログラムにより弾かれてしまった親であっても年間に最大15日間まで寮に招待することは出来る。

 この招待制度により、子が盆正月に親元へ帰省するのではなく、親が子供の元へ来るという逆転現象が何度か確認されている。

 完全寮についての説明はこの辺りでいいだろう。

 では、次の説明へと移りたいところだが、文字数が多くなってきたので次回へ持ち越そうと思う!


 では、読者諸君、続きはまた次回だ!

 また会おうアスタラビスタ同士達よベイベー


 次回へ続く………




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