第9話「9回表~9回裏」
状況はまさに混沌、9回表開始時点で両者ともに
【現在のスコア】
○両者
【太陽の着用物】
○スラックス
○ワイシャツ
○インナーシャツ
○パンツ(トランクス派)
【茜の着用物】
○インナーシャツ(高密着素材)
○ブラジャー(無重力)
○学校指定運動用短パン
○ショーツ(肉球柄)
◇
【
○ネクタイ(太陽)
○腕時計(太陽)
○ベルト(太陽)
○シュシュ(茜)
○必勝と書かれたハチマキ(茜)
○靴下右(茜)
○ブレザー(太陽)
○靴下(太陽)
○靴(太陽)
○靴下左(茜)
○学校指定ジャージ上(茜)
○学校指定ジャージ下(茜)
(やばい!やばい!やばい!やばい!本当にやばいって!)
この状況で太陽は必死で考えていた。
どうすれば当たり障りなく試合を終われるのかを…
どうすれば互いに大切な部分を露出せずに終われるのかを…
しかし、その答えは出なかった。
「
審判の
「よーし!問題!ギリシャ発祥の―――」
茜は元気よく出題を開始した。
そして…
「ザンネン!正解はカシアス・クレイだよ!何で知らないの!?」
「う……」
これでスリーアウトとなった。
太陽は最後の一枚にパンツ(トランクス派)を選択した。
「あら?
「しませんよ!ていうか、変態的な脱ぎ方とか言わないでください!」
「なになに!なんの話!?」
茜は二人の会話に割って入ったが、太陽も霧子もそれに答えずにはぐらかした。
試合の件は二人だけの秘密なのである。
「そう言えば、
「ははは!別に気にしてませんよ部長!ボクんちには弟が二人いるからたいよーの裸なんて全っ然気になりません!ボクが気になるのは―――」
(なっ!?そんな…くっ!)
太陽はショックだった。
自身はあれほど茜の裸体に焦がれつつも茜と自らが裸体を晒し、共に恥ずかしい思いをせぬように気にしていたのにも関わらず、茜は太陽の裸体には全く無関心で意識すらしていなかったのである。
これには太陽の男としてのプライドが傷つけられた。太陽は童貞として心を折られた。
「―――です!…あっ!」
「あら?茜ちゃん、どうかしたのかしら?」
「いえ!ダイジョーブです!」
茜はまだ元気一杯だ!!!
「そう、ならいいわ。ところで、
「へ?ああ、はい。わかりました。僕が出題する番ですね…」
太陽は完全に聞き逃していた。
それほどに茜から太陽の裸体を見ても気にしないと言われたことがショックだったのである。
「は?あなた今の話を…まあ良いわ。では、チェンジよ」
この言葉により、9回裏の茜の攻撃が始まった。
「問題…アメリカ合衆国の初代大統領の嫁は誰でしょうか?」
(ん?
太陽の心の声の通りだった。
茜はこの試合で初めて早打ちをしなかった。
それは、茜にとっては不本意だったが、着用物の状況を考えれば仕方がなかった。
そう、茜は次のアウトで上半身か下半身のどちらかが下着姿になるか、或いは下着を先に脱いでノーブラまたはノーパンになるのである!
そんなことは出来るなら避けたいと感じるのは女の子として当たり前の事である!
「アメリカ…アメリカ…」
茜は答えは知らなかったが必死で考えていた。
必死で答えを予測していた…が、人生はそう甘くない。
この問題、茜は不正解となった。
「ワンストライク。
「は、はい!がんびゃり…ひっひゃーい!ひたきゃんでゃ!」
茜は焦り、舌を思いきり噛んでしまった。
その理由は無論、着用物の状況だった。
アホの娘…否!
脳筋娘である茜は8回までは本当に何も考えていなかったが、さっき霧子に対して自らが語った話により、茜は自身の置かれた状況を理解していた。
では、ここで
今回は、太陽が聞き逃していたために作中にて描かれていない茜の発言を載せていくとしよう!
太陽が聞き逃したのは以下の通りである!
『ボクが気になるのは―――男の視線です!さっきも言いましたけど、ボクは弟がいるから男のアレは見慣れているというか…別に何とも思わないんです!でも男がボクの胸ばかり見るのはすっごく嫌なんです!本当に男って…男の視線ってエロくて嫌なん―――です!』
以上の―――に挟まれた部分が太陽が聞き逃した茜の言葉である。
茜がエロい男に対して厳しく、エロい男を嫌うのは、その豊満なバストを男に視られることを嫌がっているからというのが、この発言からわかるだろう。
そして、もう一つ補足しておこう。
茜の言った、あっ!、という言葉について補足する。
この、あっ!、は自らの着用物の状況を男の視線と照らし合わせた故の気付きの言葉である。
そう、茜はもし着用物を失い、このまま脱いで行ったら太陽の視線を自らに集めることになると気がついたのである!
つまりこの、あっ!、は茜の中に羞恥心が芽生えた瞬間である。
正確には、今この場にいる唯一の男である太陽の視線を意識したことで羞恥心を思い出した瞬間である。
『人は、物事に気が付き、それを認識することで初めて自らが置かれた状況を理解する』
例えば、高所恐怖症の者が瞼を閉じたまま高層ビルの屋上に連れて行かれたとする。
この時、高所恐怖症の者は視界ではその高さを認識出来ないため、最初は高さに対しての恐怖は感じない。しかし、
これは、仮に高さ1メートルの台の上で送風機による送風を当てた場合でも同じことが起きる。
逆にどれほど高くても真っ暗闇に包まれ、風が吹いてなければ高所恐怖症の者が高さに対しての恐怖を感じることはない。
人は、何かを感じて意識することでそれを認識し、認識することで初めて自らが置かれた状況を理解するのである。
それは、
補足ついでに余談だが、茜は弟達ので見慣れていると言ったが、それはあくまでも年齢の離れた弟(弟達は9歳の双子)の話であり、同級生のそれに対してどの様な反応を示すかはまた別の話である。
今回はこの辺りで良いだろう。
では、
「じゃあ次の問題行くぞ…問題…」
「ひょっとまっひぇ…てゃいむ…ひゃべれにゃいひゃりゃ…まっひぇ…」
茜は今、ちょっと待って…タイム…喋れないから…待って…と言っていた。
目に涙を溜めて舌を出しながら喋るその姿は、まるで何かを懇願している様であり、その茜の姿は…
(うっ!
そう、太陽の心の声の通りである。
舌を出しながら涙目で喋る茜の姿は妙にエロく、男に劣情を抱かせるには十分だった。
「…
「ぶ、部長!?ななな!何言っているんですか!て言うか
太陽は霧子に図星を突かれて思わず話を逸らし、茜に話を振った。
「りゃ、りゃから…ひゃいむらっひぇ…」
茜は、だ、だから…タイムだってぇ…と言ったつもりである。しかし、鈍感な太陽はそれに気がつかなかった。
一方、根がドSの霧子は、茜の言葉の意味に気が付きながらも、舌を噛んで悶える茜の姿が堪らなく
「ったく、何遊んでんだ…次の問だ…あ!…いや!タイム!タイムします!」
「え?」
「ひぇ?」
太陽の突然のタイム宣言に二人は驚きを隠せなかった。
太陽はなぜタイムをしたのか?
読者諸君はお気付きだろうか?
童貞、エロ、パンツ一丁、これがヒントだ!
(嘘だろ…やばい!やばい!やばい!
太陽はタイムを宣言すると同時に腰を引いて対決を行う机に額を密着させ、自らの下半身を見ていた。
………………お分かり頂けただろうか?
そう!太陽の股間にはバベルの塔が立っていた!
否!
否!!
否!!!
太陽の股間にはバベルの塔が勃っていたのである!!!!
もし、女性読者がいるとしたらお見苦しい話で大変申し訳ないが、男とは得てしてこんなもんなのである!
いや…童貞の男とはこんなもんなのである!
どんなに緊迫した場面でも、そこにエロがあるならば、バベルの塔は
どんなに親しい相手でも、そこに劣情を抱いたならば、バベルの塔は天空を突き刺す!
男の股間に潜むバベルの塔は、男の意思とは無関係に天高く建造されてしまうことがあるのである!!!
童貞とは斯くも滑稽で、男とは斯くも単純なものなのか…
その答えはイエスだ!
イエス!イエス!!イエス!!!
男(童貞)はみんなイエスだ!!!
イエスの
本能、煩悩、Oh,No!(懊悩)
懊悩、苦悩、金の斧ォ!(金の斧→股間のバベル)
…いや、失礼。つい熱くなってしまった。
とにかく、太陽の股間には天を突き刺す様なバベルの塔が建造されてしまった。
一応言っておく、天を突き刺す様なというのは比喩であり、サイズの話ではない。
天を突き刺すバベルの塔、そしてパンツ一丁…その状態で付近には超が付くほどの美女である剣ヶ峰霧子と、霧子とはまた違ったタイプの可愛さを持つ水無月茜がいる。
万が一、この状況を誰かに見られたら…いや、見られなくても同じこと。
万が一、霧子や茜にこのバベルの塔を発見されてしまったら…
太陽はそれを
部室には鍵が掛かっているためまず他人は来ない。となると、今この場にいる二人だけが太陽の股間のバベルを見てしまう可能性を有する。
もし、この場で二人にバベルを視認されてしまったらどうなるかわからない。特に霧子が
それほどに霧子は太陽の股間のバベル、略して太陽のバベルを嫌悪している。※霧子の太陽のバベル(正確には建造前のバベル)に対する嫌悪は前作の剣ヶ峰霧子篇を読めばわかるので、気になる方は前作を読んでほしい!
もし、太陽のバベルが霧子に視認されたらどうなるか予測が出来ない。
太陽はそれを憂慮していた。
それ故のタイム宣言であった。
思わぬかたちで太陽の股間に聳え立ってしまったバベルの塔…それを隠すためにタイムを宣言した太陽の行く末と二人の試合の結末はどうなるのか!
次回、遂に決着の刻!?
次回へ続く………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます