第4話「続・1回表」
現在、まだ太陽の攻撃中だが、太陽は連続不正解と出題妨害ペナルティにより、あっさりとツーアウトとなっている。
「ふーっ…」
「うわあっ!ちょっ、
試合の行方に焦りを感じ始めて下を向いて考え事をしていた太陽に、審判を担当している霧子が手で耳を隠して耳打ちをする様な格好で耳に息を吹きかけていた。
太陽は突然のことに驚きの声を上げたが、茜の見ている前で下手な反応をしてはならないと感じ、霧子の行為に対する抗議は小声で
焦る太陽の様子を茜がキョトンとした表情で見ていた。
「大丈夫よ…
「えっ!?そうなんですか!?…いや、だとしても話しているのを見られてますって!試合中に
太陽は霧子の言葉に小声のまま驚いた。
驚きながらも今のこの状況の不自然さを訴える太陽の耳元で霧子は話を続けた。
太陽は耳に当たる霧子の吐息を確かに感じていた。
「ふふふ、嘘よ。
野球式クイズ対決の審判は、試合中の如何なる場面であってもタイムを取る権限を持っている。これは審判なのだから当然である。
「変な嘘を
「えっ!?あなた耳を舐めて欲しいの!?」
「はいいいい!?」
霧子の口から出た謎の発言に驚愕した。
「だって今、舐めてくれませんかって言ったでしょう?」
「やめてくれませんかと言ったんですよ!耳が悪いのって
「随分な物言いね。まあ、今のも冗談よ」
霧子は太陽をからかいながら小悪魔的な笑顔で
「さて、ここからが本題なのだけれど…
「いや、文体で意味くらいわかりますって」
「そう?で、どうなの?嘗めてたの?」
「…少しだけ。まさか、
霧子の質問に対して太陽は正直に答えた。
「…やっぱりね。
図星だった。
実はこの試合、太陽は勝ち負けなど度外視だった。これから先も同じクラスで隣の席に座り、クラスメイトとして共に過ごすことになる茜を全裸にして裸体を堪能する、そんな度胸など童貞の太陽には全くなく、霧子にバレない様に適当に
つまり、太陽は茜のことを手を抜いても接戦を演じられる相手と思っていた。
「残念だけど、手を抜いて勝てるほど
「
「そう。
ここで、
今の二人の会話を振り返って気になる言葉があるだろう?
…そう!
これらは野球の用語であると共に、野球式クイズ対決の用語でもある。
そして、野球拳式クイズ対決にはこれらについての独自のルールがあるので説明しよう!
まず、
野球拳式クイズ対決での
なぜなら…
この特殊ルールにより、7回突入時点で
仮に、試合が0対0の大接戦だったとしても、9回攻撃終了時まで
そして、この特殊ルールは延長戦に突入しても効果が持続するため、10回のワンアウトまで
全裸のまま試合を続けなくてはならないのである!!
これが、野球拳式クイズ対決における
ちなみに、
では、次に
つまり、
そして、
余談だが、
え?
ジャージなどの着替えを使えばいい?
甘い!
甘過ぎる!!
サッカリンの様に甘い考え方だ!!!
諸君らは野球拳式クイズ対決を考案した人物を知っているだろう?そう、
否!
否!!
否!!!
では、どうするか?
その答えは簡単である。
持ち込んでいない衣服を着て帰るのである。
実は、この剣高クイズ部には、予備部室と呼ばれる部屋があり、そこには霧子が面白半分で買い漁った衣服が大量に置いてあるのだ。
そして、
つまり、試合終了から7日間、霧子が面白半分で買い漁った衣服の何れかが
なお、この7日間というのは、学校に通った日数であり、仮に7日間休んでも回避することは出来ない。
次は、真の圧倒的な敗者である
仮に
これこそ
なにを?
全てだ!
今までの自分を失う!
人として生きる尊厳を失う!
今までの日常が全て失われる!
なぜか?
それは、
つまり、敗者は一切の慈悲も与えられず一糸纏わぬ姿のまま帰宅させられるのである!
そう、全裸の状態で部室から放り出されてそのまま帰宅しなくてはならないのだ!
え?
部室から帰宅までの道中で何らかの物を身に纏って隠せばいい?
甘い!
相変わらず甘過ぎる!!
まるでラグドゥネームの様に甘い!!!
諸君らはあの剣ヶ峰霧子がそんな中途半端なことを許すと思うのか?
答えは無論…
否!
否!!
否!!!
否バウアー!!!!
これにより、帰宅途中で何らかの物で身体を隠すことが無いように監視し、同時に勝者は敗者が羞恥する姿を堪能出来るのである。
なお、
長くなってしまったが今回の説明は以上だ。
では、
「いくらなんでも
「絶対に無いと言えるのかしら?」
「う…それは……」
正直、太陽は絶対に無いとは言い切れなかった。
なぜなら、前回の霧子との対決でも太陽は正解率が極めて低く、本来ならば元々クイズ部に入るほどの知識と教養を持ち得ていないのである。
「いい?
「…また誰かの格言ですか?」
「どうかしらね?強いて言うなら私自身の言葉かしら…さあ、
「…わかりました。
(でも、脱がない脱がせないという結末にすることは諦めませんけどね)
太陽は心の中で再び誓った。
この試合を脱がない脱がせないという結末にすることを…
「相変わらず生意気な物言いをするわね。まあいいわ。やっと本気になった様だし、わざわざ不正行為までしてあなたを先攻にした甲斐があったわ。面白い試合を期待しているわよ。ふふふ…」
そう言うと霧子は、太陽への注意が終わったと茜に説明してタイムを解除した。
その後、茜が出題した問題に太陽はあっさり連続不正解となり、1回の表の太陽の攻撃は終了した。
太陽の思惑と霧子の期待が入り交じった試合はまだまだ1回の表が終わったところである。
次回へ続く………
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