第2話「試合開始!」
茜の口から
これはつまり、
そんなことがあって良いのだろうか!?
否!
否!!
断じて否!!!
茜の提案を聞いた太陽はそう思っていた。
「勝手に僕の考えにしないでください!」
「
「あ、すみません。つい…」
「次に読んだら折檻よ」
太陽と霧子は端から見たら意味のわからない会話をしていた。
その様子を不思議な顔をして見ていた茜が再び口を開いた。
「あの…部長?やっぱり、ダメなのでしょうか?」
無論だ!!!
恐らく霧子はそう言おうとしていたはずだった。
しかし、霧子の口から出たのは意外な言葉だった。
「ふふ、良いわよ」
「えっ!?ほんとですか!?」
なーんて、うっそぴょーん!!!と、霧子が言う場面だった。
だが、ほんの少し間を置いてから出た霧子の言葉はそれとは違っていた。
「…ええ、本当よ。私に二言はないわ。ただし、この試合で
ここで、二度目の
そろそろ読者の諸君も気になっていると思うので、今回の
今回の太陽の対戦相手である、水無月茜の今日の着用物について番号をつけて羅列しておこう。
①シュシュ(猫の足跡柄)※手首に着用※
②学校指定ジャージ上
③インナーシャツ(高密着素材)
④ブラジャー(無重力)
⑤学校指定ジャージ下
⑥学校指定運動用短パン
⑦ショーツ(肉球柄)
⑧靴下(猫の足跡柄)
⑨運動用ミドルブーツ(靴底が運動に適した高反発素材の物)
⑩必勝と書かれたハチマキ(数合わせ)
以上の10点が今日の茜の着用物である。
この内、②から⑦までが霧子の言った身体を覆う衣類に該当する。
今回は需要の薄い太陽の着用物も一応羅列しておくことにする。
①ブレザー
②スラックス
③ワイシャツ
④インナーシャツ
⑤ネクタイ
⑥靴下(三足で980円)
⑦靴
⑧腕時計(スポーティーデジタル)
⑨ベルト(数合わせ)
⑩謎のチェーン(財布に繋がっている模様)
以上の10点が今日の太陽の…間違えた!
正しくは、⑩はパンツ(トランクス派)である。
危うくノーパンの変態男にするところだったが、太陽は元々そんな感じだから気にすることもないだろう。
では、
「やったー!!ありがとうございます!!部長!!ボクはこのブーツを
「え!?………そ、そう?
霧子は喜んでブーツを指定した茜の反応に明らかに驚いていたが、それも無理からぬことだった。
普通ならば、
しかし、茜は霧子の
これにより、茜の着用物は以下の通りに変化した。
①シュシュ(猫の足跡柄)※手首に着用※
②学校指定ジャージ上
③インナーシャツ(高密着素材)
④ブラジャー(無重力)
⑤学校指定ジャージ下
⑥学校指定運動用短パン
⑦ショーツ(肉球柄)
⑧靴下右(猫の足跡柄)
⑨靴下左(猫の足跡柄)
⑩必勝と書かれたハチマキ(数合わせ)
◇
これは
茜がブーツを
「
暫く何も言わなかった太陽が審判である霧子に
「は?
「いやいや、なんか二人して僕の扱い酷くないですか!?
太陽は不意に霧子から罵られたことが理解出来なかった。
しかし、その反面で真性の
「私が何かおかしなことを言ったかしら?というか、次に読んだら折檻と言ったはずよ。そんなに折檻されたいの?ふふふ…」
「う……何でもないです。じゃなくて!何で僕はバカと言われたんですか!」
「そんなの決まっているじゃない。あなたが
「いや、腕時計はセーフでしょう?衣類ではないですし身体も覆いませんし…」
「はぁ……………ちっ……」
(う………今絶対に舌打ちしたよな?怒らせちゃったか?
霧子が浅くため息をついた後に小さな舌打ちをしたことで、太陽は威圧感によって身体を緊張させていた。
同時に心の中は先週の霧子の可愛さを思い出して弛緩していた。
「
「は、はい!」
霧子は太陽を呼び捨てにした。
「
「女性限定ルール!?いや、だってルールブックにはそんなこと…」
「この私がルールブックよ!!!」
ズガーン!!!!※落雷のSE※
その言葉は太陽に向かって雷が落ちた様な衝撃の一言だった。
私がルールブックよ!!!
偶然か必然か、野球要素がある野球拳式クイズ対決において、それも今回の試合で審判を担当する霧子から、そう言われてしまってはぐうの音も出ないのである。
(そんな…やっぱり
太陽は心の中で愚痴っていた。
しかし、そんな太陽とは裏腹に、自分の提案が通って機嫌が良くなった茜は、太陽に向けていた刺々しい態度を少しだけ柔らかくしていた。
「まあまあ!ドンマイだよ!たいよー!」
茜は初めて話したその日から太陽のことをたいよーと読んでいる。
(
太陽はこの試合の結末を既に描いていた。
そして、試合開始の時間がやって来た。
「厳正なコイントスの結果、表が出たので、この試合の先攻は表を選択した太陽くんに決まったわ。
(せいぜいって……ん?霧子さん?)
審判として試合開始のコールをする直前、霧子は太陽の肩を指でつつき、コイントスに使用した
余談だが、野球拳式クイズ対決で何らかの理由でコイントスを行う場合、ラッキーペニーの話が有名な1セント硬貨を使用する決まりとなっている。
(んなっ!?ちょっ!?
霧子が太陽に見せたコインは両面共にエイブラハム・リンカーンがいた。つまりは両面共に表面のデザインが刻印されてイカサマコインだった。正式にはイカサマコインではなく、極めて珍しい両面とも表面が刻印されたエラー硬貨であるが…ともあれ、霧子はイカサマを
ちなみに、霧子がいつも履いているローファーはコインローファータイプてあり、これは別名ペニーローファーとも呼ばれているものである。そして、このコイントスに使用した
ペニーローファーの由来についての説明は割愛するので気になった人は自分で調べて欲しい。
知識とは、他者から簡単に教えられるよりも、自らがそれを調べることでより記憶に残るものなので、何かについて気になったときには自分で調べることが大切だぞ!
(なんで!?どうしてそんなことを!?そんなことまでして僕を先攻にする理由は!?)
イカサマをしてまで太陽を先攻にした霧子の意図を全く理解出来ない太陽の心を置き去りにしたまま、霧子の口が開いた。
「試合開始!!!」
ついに、運命(?)によって紡がれた同級生対決が始まった!
「たいよー!さっそく第1問いくよ!」
「う…あ…わかった」
(くそ!今は
動揺したままの太陽に茜は元気よく出題を開始した。
「問題!まずは簡単な常識問題から!ボクが試合に勝ったら買って貰える約束のアブドゥアーの開発者の名前は何でしょう!フルネームで答えてね!」
「だからアブドゥアーってなんなんだよおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!」
部室内に太陽の嘆きとも言えるツッコミが響き渡った。
ちなみに、剣高クイズ部の部室は完全防音なのでどんなに大声で叫んでも外部に音が漏れることは一切ない。
こうして、太陽と茜の野球拳式クイズ対決は幕を開けた!
果たしてどちらが勝つのか?
太陽を先攻にした霧子の意図は?
この戦いの結末は?
様々な
次回へ続く………
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