野球拳式クイズ対決 ~突撃!隣の脳筋娘・水無月茜篇~

貴音真

第1話「2回戦!開幕直前!」

【5月8日(金曜日)】


 ここは、私立剣ヶ峰けんがみね学園高等部にあるクイズ部の部室である。

 暗幕で外部からの視線を遮断し、入口を施錠された部室で、三人の男女が机を囲むようにして対峙していた。


 今、まさに!二人の男女の知識と矜持とを賭けたクイズ対決が幕を開けようとしていた!


 ズガーン!!!※落雷の音のSE※




 野球拳…

 それは男のロマン…

 ジャンケンで勝てば女の子を脱がすことが出来るという究極の娯楽…

 究極の娯楽である野球拳、知識と教養が培われるクイズ、スポーツとして根強い人気のある野球…

 それら三つのコンテンツが交わる刻、そこには楽園パラデイソが具現する!


 野球拳式クイズ対決・第二回戦!

 ここに開幕!!!




「部長!ほんとーにが勝ったらアレ買ってくれるんですよね!?」


 大きくて元気一杯な声で話しているのは今回の対戦相手、水無月みなつきあかねである。

 茜はややくせっ毛のある黒髪のショートヘアーがトレードマークで、パッチリとした真ん丸お目目が特徴的な綺麗というよりは可愛い女の子だ!

 その可愛さから、同級生の友達と共に剣ヶ峰学園高等部のと呼ばれて注目を集めている。

 ちなみに、茜が和製オードリーで、友達が和製キャサリンである。

 性格は、普段は明るく天真爛漫だが、とある理由からエロい考えを持つ男を嫌っているため、エロい考えを持つ者に対しては豹変したように厳しくなる。

 まさに猫のように気まぐれな女の子だ!

 茜はパッと見ると細身かと思いきや、出るところは出ている体型をしている。

 どうやら、エロい男を嫌う理由はその体型にありそうだ。

 ちなみに、ネットやメールなどでのやり取りは一人称をで統一しているが、実際に会話をする時の一人称は何故かである。


「ええ、この試合に勝てばあかねちゃんの欲しがっていたを買ってあげるわ。もちろん学園運営費でね」


 至極当然のように学園運営費を私的な買い物に使おうとしているこの女は、学園の支配者、女帝クイーン剣ヶ峰けんがみね霧子きりこだ!

 霧子は私立剣ヶ峰学園高等部クイズ部、通称剣高クイズ部の部長であり、剣ヶ峰学園の理事長、風紀委員長、学生会長、新入生入学審査委員長などを兼任するスーパー女子高生である。

 ちなみに霧子は処女だ。


「あの、二人ともちょっと良いですか?アブドゥアーってなんですか?」


「うっさい!黙れ変態!」


 アブドゥアーについて質問して茜に変態と言われたこの男は、本作の主人公であり、今日これから水無月茜と野球拳式クイズ対決をする張本人、新入にいり太陽たいようだ!

 シンイリではない!ニイリだ!

 何を隠そう太陽は、先週この場所で霧子と野球拳式クイズ対決を行い、紆余曲折あった後に霧子のファーストキスを奪っている。

 そう、奪っている…

 太陽霧子ファーストキスを奪っているのだ。

 誰がなんと言おうと太陽が霧子のを奪ったのだ!

 ちなみに、太陽は童貞であるが、一応、ファーストキスだけは幼稚園の時に同級生と済ませている。

 子供の頃の話ではあるが、その点では霧子よりも経験があったのである。


「なっ!?み、水無月みなつきさん?どうしちゃったの?なんか性格キツくない?」


 いつもとは違う茜の態度に太陽は驚きを隠せなかった。


「うっさい!試合中以外プライベートでボクに馴れ馴れしく話しかけないでくれる!」


(うへぇ…取り付くシマもねえ。マジでどうしちゃったんだ?…そう言えば先週の霧子きりこさんとの対決以来、教室で話しかけてくれなくなったけど、それと何か関係あるのかな?)


 太陽は一週間前から茜と全く会話していなかった事を思い出した。

 童貞である太陽は、自ら女の子に話しかけることが苦手であり、教室で隣の席に座る茜に対しても茜から話しかけてこない限り会話することがなかった。


「さて、二人とも無駄話はそのくらいにしてそろそろ試合を開始するわよ」


「はい!アブドゥアーのために絶対に勝ちます!」


(だからアブドゥアーってなんだよ…)


 太陽はアブドゥアーが気になっていた。


太陽たいようくん、返事はどうしたのかしら?まさか太陽たいようくんの分際でこの私を無視するなんてことないわよね?」


「うっ…はい!頑張ります!」


 霧子の威圧的な態度に太陽は気圧された。

 やはり霧子は女帝クイーンなのである。


「よろしい。じゃあ今から行う野球拳式クイズ対決のルールの説明…は省くからルールブックを読んで頂戴。というか、二人とも既に知っているわよね?」


 ここで、時間停止タイムストップ

 ルールブックとは、前作の『野球拳式クイズ対決 ~女帝・剣ヶ峰霧子篇~』の巻末に収録されているので、まだ読んだことがないという方は是非とも読んで欲しい。

 ルールブックは表と裏があるが、表を読めば野球式クイズ対決の基本的なルールが、裏を読めば野球式クイズ対決特有のルールがそれぞれわかるようになっている。

 今作は前作と世界観も設定も引き継いでいる直接の続編なので、前作を読んでいない読者は前作を読んだほうが今作を楽しめると思うので、ルールブックだけでなく本編も読んで欲しい。

 いや、今作を読んでこの野球拳式クイズ対決シリーズが気になったとしたら、是非とも前作を読んでくれ!


 では、時間停止タイムストップ解除!


です!!!!!」


「だ…じ……ぶ…す」


 太陽の返事は茜の声に掻き消されていた。

 ちなみに太陽は、だいじょうぶですと言っていた。


あかねちゃんは本当に元気で良いわね。予め伝えていた通り、この試合は私が審判をやるわ。不正はどんどん取り締まるから覚悟しなさい。試合は基本的に公式戦ルールで行い、9回で決着がつかなければ延長戦よ。無論、着用物を全て奪われたらその時点で試合終了コールドよ。良いわね?」


「あ…あの!!!部長!!!一つだけ良いですか!!!」


「あらあかねちゃん、どうしたのかしら?」


「あの…その……ノ、絶対不可侵領域ノータッチエリアを指定したいのですが、ダメですか?」


 ほんの数秒前の大声が嘘の様に小さな声で茜が言った。

 絶対不可侵領域ノータッチエリアとは、指定した着用物を奪われないように出来る野球拳式クイズ対決の未実装ルールである。

 霧子の面白半分…もとい、革命的な思いつきにより、野球式クイズ対決に野球拳要素を加算した野球拳式クイズ対決が誕生して一年余り、全国で唯一、この剣高クイズ部にのみ存在する野球拳式クイズ対決、そのルールブックに記載された絶対不可侵領域ノータッチエリアというルールは、未だに誰も使用していないお飾りのルールであった。


 水無月茜の突然の提案の行方は果たしてどうなるのか!?


 野球拳式クイズ対決・第二回戦。

 新入にいり太陽たいよう水無月みなつきあかねは、まだ始まる前だった。


 ズガーン!!!!※落雷のSE※


 次回へ続く………


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