ささやかな願い事
異世界への遠征が終わり、元の世界に戻ってきた二日後――――
六花特殊作戦群のメンバー6人は、
「ここに来るのは久しぶりね。父さんも母さんもどこかにいるかしら」
「そういえば
「私たちに話ってなんだろうね? 私たちのお願い事、叶ったのかな?」
「どうでしょう? 結構無茶なお願いをしてしまいましたが、叶っているといいですね」
「みんな、そろそろ部屋に入るから、静かにね」
『はーい』
退魔士組織の上層部に呼ばれたにもかかわらず、見習いたちに緊張はあまりなかった。
彼女たちが控室で待っていると、
「お待たせしました、案内します」
彼らが通されたのは、庁舎の最上階に位置する、総合作戦本部室――――要するに、重要な会議がある際に使用される厳粛な会場である。両側に高級そうな机やイスがズラッと並んでいるが、この日は特に使用していないので誰もおらず、代わりに議長席に一人の老人が座っていた。
「
「ああ、ご苦労さん。すまんな、今日は学校もあるだろうに、無理を言って集まってもらってのぅ。ま、ま、そこに腰かけてくれ」
『失礼します』
退魔士たちの総元締めにして、日本国の魔の物掃討を指揮した老元帥――
性格は比較的穏やかだが、癖の強い退魔士たちを纏め上げているその調整能力は、特筆すべきものがあった。
「まずは6人とも、命を落とす可能性がある中、未知の世界の遠征ご苦労じゃった。冷泉君のレポートも読んだが、貴重な経験をたくさん積んできたことだろう。その経験こそが、将来の退魔士たちの力になる…………本当によくやってくれた。どうじゃ、異世界は楽しかったか?」
「
「確かに危険もたくさんありましたが、やはり知らない世界を知ることができたのは、とても素晴らしかったです」
「そうか、そうか! 出来ればワシが行きたかったのぉ! 異世界に転移して、若返って、奇麗なお嬢ちゃんとパーッとやってじゃな!」
「元帥……奥様に叱られますよ」
「うむ、カアチャンには内緒にしてくれ」
何よりこの元帥は日本国内でも特に強いのは間違いないのだが、子供好きで、ミーハーで、この歳になってラノベを読んでいたりする変わり者でもある。
話が逸れ始めたので、
「ま、なんじゃな、そなたたちは本当によく頑張ってくれた。若いのに、よくぞ未知の世界への遠征に志願してくれた。そのお礼と言ってはなんじゃが、褒美をやろう」
そう言って
「少し早いが春休みでも夏休みでも、この中で好きな場所に6人で旅行に行くとよい。費用はすべて経費で落ちる」
「へぇ、この中のどれでもいいんですね! なんか高級リゾートばっかり!」
「わあぁぁ! 私南国がいいっ!」
「どうしよっかな? イギリスとか言ってみたいな」
「国内だと滞在日数長いんですね。また温泉でも私はいいですよ? 地獄のように熱いお湯がいいですね♪」
見習いたちはにわかに色めき立ったが、とりあえずこの場ではいったん保留にしておく。
「それとじゃが……
「私ですか?」
ここで、なぜか
「とある人物からこれを渡すよう言われてのう。よかったの、千間君、そなたが今回の戦いのMVPだそうじゃ。別途賞金100万円を渡そう」
「え、えええええ!? 私が!? ワタシナンデ!?」
「すごいじゃない
「
「やるじゃない
「わ、わわわ、まってまって!? 私、そんなにっ!? えへへ、ありがとうっ、戦友っ!」
なんと、今回の遠征で功績一番とされたのは、
ほかの見習い3人が、
「ふふふ、
「もしかしたら、競技中も異世界の存在が彼女の活躍を見ていたのかもしれませんね」
仲間たちに胴上げされる
「ほっほっほ、女の子の友情は過激じゃのう。ま、わしももう少し話を聞きたいのじゃが…………その前に、先ほどこの討魔省の隣にある先進医療施設に、意識不明の異世界人が保護されたとの情報が入ってきてのぉ」
『異世界人が保護された!?』
「ちょっ、胴上げ途中でやめないで!」
4人の見習いたちは、その話を聞いて急に騒然となった。
「気になるじゃろ。一緒に行くか?」
『はいっ!』
「元帥……その、あとできちんと正式な辞令を」
「相変わらずですね、元帥は。私たちも行きましょうか」
こうして彼らは、正式な会合もそこそこに、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます