史上最大の任務 2
暗殺任務と聞いて気が乗らなかった
「わはーーーっ!! 海だーーーーーーーっっ!! 南の島のリゾートだっ!!」
女の子のあこがれ――――青い海に白い砂浜の南国リゾートが目の前にある。それだけで、先ほどまでダダ下がりだった
いつの間にか所持していたパスポートで入管を難なく潜り抜け、空港から外に出ると、石畳で舗装された美しい町並みが広がり、すぐ近くにはパラソルや屋台が点在する海辺に行くことができる。
行きかう人々は、誰もが一目見ただけで分かるセレブ観光客ばかりで、常夏の気候に合わせてアロハシャツやビキニなどを纏っている。
「えっへへ~! 私ってば運がいいなーっ! こんなにいいところが競技会場なら、ずっと遊んでいたい! 海で泳いで! ビーチで砂のお城作って! バーベキューして! サーフィンして! アイス食べて! んん~ワクワクが止まらないね~っ! あ、でも……競技もこなさなきゃならないんだよね。遊びたいけど、負けるのはヤだし、なにより勝手に終わっちゃったら、好きに遊べないよね」
競技など気にせず思い切りはしゃぎたいのはやまやまだが、
あと、競技であるからにはもう一人、自分と同じ任務を受けている人物がいるわけで…………その人物が任務を放棄して一緒に遊んでくれるならいいが、そうでなければ遊んでいるうちに勝利をもぎ取られるか、場合によってはなにかしらやらかして、暗殺対象が逃げ出してしまうかもしれない。
(
まだ自身の欲望に忠実な年齢の
完全に暗殺者失格であるが、決めたからには早速行動に移るのが、
「でも、その前にアロハシャツを買うくらいはいいよねっ!」
×××
一方、同時刻の島の反対側――――コンゴーナス島にある唯一の港では、豪華客船からもう一人の競技参加者が陸地に降り立った。
「ンだよ……せっかく豪勢な船旅を楽しもうってのに、もう終わりかよ。シケてやがるぜ、まったく」
そう言って毒づくのは、見た目は平均的な体系の給仕服を着た男性――ボーイ。
その正体は、魔術の力を持つ「魔人」であり、殺人や諧謔を趣味とするとんでもないサディストなのである。
(まぁいい……今回の競技は「暗殺」なんだよなぁ! なんてこたぁねぇ、ターゲットがどこにいるか知らねぇが、ここにいるのは殆ど無防備な奴らばっかだ。だったら…………全員殺せば問題ねぇよな! ギャハハハハハっ!!)
さすがに、リゾートの真ん中で物騒なことを口走るほど分別のないことはしないが、それでも彼が心の中でつぶやく邪悪な言葉は少なからず表情に出てしまい、そのギラつく眼を見た周囲の観光客たちは、不気味に思って彼を避けた。
(ヒャハハっ! そんじゃまずは……この島から逃げる手段を全部ぶっ壊してからだな! 飛行機に船にボート……片っ端から壊してやりゃ、誰もこの島からは逃げられねぇ! そうすりゃ、ここにいる奴ら全員、好きなだけいたぶり殺せるってもんだ! キッキヒヒヒッ!!)
なんと、ボーイもまた
どうも二人は、自分の欲望に忠実すぎるきらいがあるようだが、
彼の行動は
「手始めに船だな! 動かなくしちまえば、ただの水に浮かぶ箱だからなァ!」
そう言って彼が手元に精製したのは、一見すると何の変哲もないカーペットだが、表面には魔力を込めると大爆発を引き起こす魔法陣が描かれている。
ボーイは港にある5隻の船すべてに忍び込み、ボイラー室にリモート爆弾と化したカーペットを設置した。カーペットの爆弾と聞くとあまり威力がないように思えるが、模様として描かれた魔法陣の爆発の威力はC-4爆弾に匹敵し、ボイラーを吹き飛ばすには十分な威力が出る。小型船舶なら、爆発で真っ二つになるだろう。
「ギャハハ! 島にある船はこれで全部だな! いざとなりゃ、カーペット爆弾で全部オダブツだぜ! 逃げるために乗り込もうとする船が爆発したときの絶望する顔は、さぞかし見ものだろうヨ! 次は飛行機だな!」
念には念を入れ、浜辺に係留されているヨットの類にまで片っ端から爆弾を仕掛けたボーイ。もしかしたら、時間が経った後で入港してくる船もいるかもしれないが、その時は「グランド・メテオ」で強引に沈没させてしまえばいい。
最後の小型船舶から、ウキウキで飛び降りて次の設置場所に向かうボーイ。だが、その姿をこっそり見ている者がいた。
「あの人、何してるんだろ? さっきから船に何かしてるみたいだけど?」
つい先ほど見つけた、挙動不審なウエイターの様子を、シュノーケルを着けた
「もしかして……あれ、対戦相手? ウエイターさんの格好してるけど、なんかすっごく邪悪な顔してる。もう、見るからに「悪いことしてます」って顔に書いてある感じ。ん~……?」
ボーイが立ち去ってから、誰もいないことを確認して小型船に忍び込む
「絨毯? でも、ただの絨毯じゃさそう……術力の気配がする。んー、よくわからない」
残念ながら、
しかもその絨毯は、どれもこれも同じ柄の物ばかりで、しかも設置場所は決まってエンジンやボイラーなどの動力部だった。
「なんだろう…………この絨毯が、いざとなったら電磁パルスを発生させて、動力部を壊す、とか?」
結局
そして彼女は、あの顔がおっかないウエイターは対戦相手であり、しかもなぜか自分と同じ…………島からの脱出経路の破壊をもくろんでいるらしい、と判断した。
「対戦相手を見つけたら、人目に付かないところで倒しておこうかと思ったけれど、ちょっと予定変更しよっと。それにしても…………あのウエイターさん、この絨毯をどっから持ってきたんだろう?」
まだ相手の正体を測りかねている
(私のターン! 特殊潜航艇
目に見える脱出経路は対戦相手に任せ、
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