わたしは人気ユーチューヴァー 4
動画の撮影を行おうとせず、なぜかタピオカの販売を行っている
その行動に何の意味があるのか……
(まさか……ここ数日で資金が尽きた、とか? いやいや、そんなバカなことがあるかよっ!)
手持ちの資金が尽きた故に、資金を稼ぎなおしている可能性もなくもないが、それならバイトするなり、もっと他にいい方法があるはずだ。
そう考える
その異質さを見逃さなかった
「な、何するんですかっ!?」
「オイ、テメェっ! 随分とニヤついてる顔してんじゃねェか……俺の目の前でそんなムカツク顔するってェこたぁ、殴られてぇってこンだろ? あ?」
「やめてくださいよぉ! 僕は……僕はっ!
「何わけわかんねェこと言ってやがるっ! このっ、腐れメガネっ!」
完全にチンピラモードの
(は……? この感覚、間違いねぇ……『施療』が効く奴だ!)
ほとんど「勘」だが、傷や持病ではない何らかの状態異常が、この男子高校生を蝕んでいる。一か八か……
すると、今まで暴れていた男子高校生は、見る見るうちに気力を失っていき、完全に治癒したころには、魂が抜けたかのようにポケーっとしてしまった。
「僕は……いったい? 何をしようと?」
「お前、ちょっとソレよこせっ」
見た目は何の変哲もなく、きちんと黒いタピオカが沈んでいるミルクティーだが…………
(こりゃぁひょっとして、社長と同じ………いや、麻薬か何かか!?)
その瞬間、彼の頭の中で今起きていることすべての点と点が、線でつながった。
よく見れば、周囲で和気あいあいとタピオカを飲んでいる学生たちの誰もかれもが、不自然なまでにニコニコしていることに気が付く。
そして、その元凶であるタピオカを売りさばいているのは――――
「はーい、毎度あり~♪ おいしかったら『らいさのアトリエ』チャンネル登録よろしくね~♪」
『ヨロコンデー!』
「そこまでだ! 悪党っ!」
「あら、誰かと思ったら
怒りの形相で殴りこんできた
その笑顔は、どことなく控室にいるステラエルに似ていた。
「どう? よかったらあなたも一つ飲んでみる? 友達価格でタダにしてあげるわ。ああもちろん、ちゃんと並んで買ってね」
「ふざけんなっ!! テメェの企み、見逃すわけにはいかねェっ!!」
そう言って彼はナイフを隠すために着ていた上着を脱ぎ棄てると、問答無用で両手にジャックナイフを構えた。
「わあぁ!? こ、こいつ、ナイフもってるぞ!?」
「きゃああぁぁぁ!?」
「人殺しー」
横入りしようとしているように見えた
「あーら、営業妨害はやめていただけるかしら?」
「はっ、見え透いた真似を……テメエ、このタピオカの中に麻薬仕込んだだろ! そして客を依存させて、動画の宣伝をしようってか?」
「さあ、どうでしょうね?」
まさに典型的な悪党の所業であった。
「それより見て見て! これ、私の動画なんだけど、よくできてるでしょう? みんなが見てくれるから「いいね👍」もいつの間にかこーんなにたまっちゃった♪」
そう言って
画面には動画サイトで『らいさのアトリエ』を再生しており、動画の端っこの方にある「いいね👍」の数は早くも6000を超えていた。
しかも、変なところで凝り性の
「今日も売り上げ好調だったし、今日買っていった子たちが広めてくれれば、もう何もしなくても私の勝ちは確定かもね?」
「………ハッ、それがどうした……! ここでテメエを殺して、投稿した動画を削除してやりゃあ何も問題ねぇよなァ!」
瞬間!
(チッ、思っていたより早えぇっ! こいつ、やっぱり………、……っ!?)
この動きはやはりただものではない……
「ガハッ……ぐ、げっほ………っ!?」
体中の水分が失われていき、意識もどんどん遠のいていく。だが、
(「毒」か……クソッ、『施療』っ!)
「えー、もう回復したの?」
「ウルセェ……」
息を整えつつある
(ないわー……。今度は毒を完全に回復しちゃうとか、ないわー)
というのも
そして今回、またしても自分と相性の悪い能力を相手が持っているとわかり、自分のクジ運のなさに辟易してしまったのである。
とはいえ、彼女は別に負けたとは思っていない。ただちょっと決着が面倒になっただけである。
「おまわりさーんこっちです! こいつがナイフを持った不審者です!」
「うお、しまった!」
「警察だ!」
「動くな! 武器を捨てろ!」
「逮捕する!」
異世界とはいえ、ここはまかりなりにも先進国日本の首都の一角である。武器を使って人を脅せば、当然警察がやってくる。
「警察の皆さん! 頑張って! 逮捕してください!」
「よし! 本官に任せろ!」
「御用だ御用だ!」
「フザケンナ!このヤロウ!」
「だああぁぁ畜生! 余計なことすんじゃねェ!」
「らァっ! こんなところで逮捕されてたまっか! アイツの動画を消してやるっ!」
「グワーッ! 公務執行妨害!」
「巡査長が切られた! 許せるぞオイ!」
「増援だ、増援を呼べ!」
「曲者だ! 出会え出会え!」
こうして
(手配度★★★★★)
そして、ちゃっかりその場に居合わせて騒動を録画していた
歴史に残るであろう殺人鬼の無双風景を映した動画は『らいさのアトリエ』を一瞬で上回る再生数を獲得し、その後わずか30分で目標の1万いいねを獲得したのであった。
第五試合結果
勝者:
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