神様からの試練 2
「う……うぅ、ここは…………?」
墜落寸前で意識を失っていた
ハッとあたりを見渡すと、果たして彼女は自分の身体よりも少し小さい、キノコに手足が生えたような生物の群れに囲まれていた。
「こ、この子たち……まさか、例のピ愚民!? しかも、ここどこ!? 周りの物がすっごく大きいんだけど!?」
まずは現状把握すべく、その場に立ち上がる
「no (カミサマだべ)」
「on (天孫降臨だ)」
『orz』
「えぇっと…………」
おもむろに一斉に土下座するピ愚民たち。
どうやら彼らは、
「まずはそこに10列で並びなさい」
『orz』
「んー……指示の出し方が悪かったかな。じゃあ、もう一度。この線を基準に…………あれ?」
(うそ!? あたしの身体、幽霊みたいになってる!? なんで!? 同期魂魄体が不具合を起こした!?)
ふと彼女は、説明の最後で「参加者同士の戦闘はできない」という規定を思い出した。そう「禁止」ではなく「できない」なのである。
要するにこの競技は、参加者がこの世界に物理的接触ができないようにするために、何らかの力が働いているということになる。
「ああもう…………そりゃ確かに神様だわね。んー、いけない、別の手段を考えないと。とりあえず今は、このはっぱを目印に右から小さい順に10列に並びなさい」
『orz』
今度は目標物を決めて、より詳細な指示を下したところ、ピ愚民たちは先ほどの混乱が嘘のように整然と並び始めた。かかった時間も3分程度で済んだ。
(あー、なるほど。この子たちは指示待ち人間と言うより、ロボットみたいな感じなのか。詳細な命令はすぐに理解するけど、あいまいな指示だとどうすればいいかわからなくなるのね)
ピ愚民たちの生態についてなんとなく理解した
10列に並ばせて数えた結果、今この場にいるピ愚民の数は447体。状況次第では、この先まだまだ増えるだろう。しかしそれは、戦力が増すたびに詳細な指示が行き届かなくなる可能性を示唆していた。
×××
さてその頃、
『orz』
「ちっ……なんだこいつら! 俺はそーゆー媚びた態度は嫌なんだよ!」
イライラしているアルは、無抵抗にひれ伏すピ愚民たちの頭を蹴飛ばしてやろうとしたが、その蹴りは見事にピ愚民の身体をすり抜け、危うくその場でバランスを崩して転びそうになった。
よく見れば、自分の身体が半透明になっており、その辺の石ころや木の枝に触れてもすり抜けてしまう。そして、彼もまたすぐに「参加者同士の戦闘ができない」の意味を理解した。
「そういうことかああぁぁぁぁぁぁっっ!!!!! 返せ! 俺の実体を返せ!! 今すぐ返せこんちくしょぉっ!!」
『orz……』
烈火のごとく怒り狂うアルだったが、地団駄も踏めず壁ドンもできないせいで、イライラが解消するどころか余計募るばかり。
そして周囲のピ愚民たちは、神様がお怒りになっていることに恐れを抱き、怒りを鎮めようと、ひたすらその場に土下座しはじめた。彼らにとってアルの怒りは余程恐ろしかったのか、中には身を震わせて何らかの液体を漏らしている個体もいた。
「くうぅ……競技とはいえ、こんな妙ちくりんな生き物の神様をやってやらにゃならんのか! 気がのらねぇが、このまま何もしないで負けるのは癪に障る。どうにかして、勝ち筋を見つけねぇとな。とりあえず、お前ら全員で何匹だ、教えろ!」
『orz』
「鳴き声じゃわかんねぇよ! 俺にわかる言葉を話せ! 話せなかったらなんか工夫しろ!!」
『orz……』
無茶ぶりする神様に戸惑うピ愚民たちだったが、怒り狂ったアルが恐ろしいからか、彼らはいそいそと話し合い、1分後には地面に左から木の枝4本、葉っぱ5枚、小石6つを並べた。
いったい何を表現したいのか理解できなかったアルだが、やや考え抜いて、彼らが「456」を表現したのだということに気が付いた。つまり、ここにいるピ愚民の数は456体ということになる。
「そうか…………こいつら、文字もねぇのか。ちっ、どうすっかなこれ」
思考の時間を経たことで、少しずつ頭が冷静になってきたアルは、こちらの指示は通じるが向こうの言葉も文字もわからないピ愚民たちをどう扱うべきか、しばらくの間、深く思案したのだった。
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