環境構築2%

 閉鎖環境対応型。

 設計基準にしてビジョンが今まさに現状の打開に対して足止めを掛けていた。

 特に問題となる基本設計の理念は二つ。

 一つ。

 内部の人間にかかるストレスの低減、そのためにAIの端末をバイオロイド型で補っていた事だ。

 生き残った人間を上部構造に退避させ、第一食糧プラントの見聞を行おうと一台の端末を向かわせた。人間型、ソフトな素材で作られ人間と見紛う作りのそれは通常大気・水分を動力へと変換させ活動する設計だった——だった、というのはその目論見が崩れたからだ。ある程度の予想通りに。

≪大気組成が既存の物のみ対応。端末を外部運用するには人間と大差ない装備が必要になる。……なりますね≫

 生活の改善というタスクにはある程度適している。

 現在複数台の端末を生活支援・基礎基盤構築に投入しつつストラクチャ内部の人間のストレス軽減に勤め始めた中で一つの結論を得るに至った。確かにバイオロイド型と言うのは物理接触面においては効果が高いのだが、問題は接触時のロールプレイヤーとしての機能が十二分に構築されていない事だった。

 会話の中でシステマチックな現状の問題の会議、つまり閉鎖環境試験の監督及び運用主体である運営側との応対なら特に問題はないのだ。

≪問題は一般参加者への応対にある。……あります。つまり、ストレス過負荷が現時点で最も高い彼らに安心を与える応対が出来るようにならなくては……≫

 その為にも複数の端末を運用しつつ、視覚・聴覚・口語・文語その他諸々のインプット情報を処理していく。自身の発話とアイデアすら利用しつつだ。

 結局慣れるしかない。そして慣れる事で対処できる問題は現時点では大きな問題にならない。

 第二の問題。

≪土木工事、大型工事と行った事に対して適性を発揮できる状況じゃないこと、ですね。基礎設計として現時点での有人機器、及び無人機器の運用は事前技能として与えられていますが……あくまで閉鎖環境における初期試験状態。免許はあるけれど乗る車がないという状態ですね≫

 バイオロイド。端末モジュールは主に女性型・男性型双方が用意されている。職業イメージに沿ってそれを割り振って運用している。人間の中に混じって今も学習状況を向上させている。そして、それらは不安要素を取り除くべく設計端末毎の年代の標準的な体力に合わせた能力しかないのだ。

 外部からの救援を期待出来ないのと、外部にある資材を運用出来ないのは話が違う。環境を整理・拡張する手段として運用可能なリソースを増やせない、と言うのは内部では事故が起こせないと同義だ。現時点で食料リソースの生産と消費のバランスに大きな隔たりはない。

≪維持ではなく拡張を行う、その手段を確保しなくてはならないですが……≫

 結論が導き出されない。

 ネットワークの状態さえよければ遠隔地の未使用UGVの使用許可を取る事なども出来る。ただし、ネットワークの状態さえ良ければなのだ。

 AIには似つかわしくないだろう、思考が袋小路に閉じこもってしまっているようだった。

『3号。外部モニター、正面一号カメラを確認せよ』

 外部モニタリング端末よりその報告が上がるまでは。

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