環境構築0%

 別に取り立てて何もない日だったのだ。

 何も起こるはずもない夏の日だった。

 正午過ぎに人々が倒れて行った。

 原因が見えず、倒れた人を映していたスマホを持っていた奴らも倒れた。

 スマホを持っていたやつらに負けじと駆け付けたメディアも倒れた。

 近くのビルに居て慌てて助けに走った善人も、倒れた人間から何かを盗もうと近づいたケチな悪党も。

 エアコンを利かせていた車に乗った人たちも、地下鉄に乗っていた人々も、何もわからず地上に降りた旅客機の乗客も、海の上を行く客船の人々も。

 ある一定の高度下にいた人々に災難は訪れた。

 単純に生死を分けたのはその時その人々がある高さより上に居たか居なかった。その程度の違いだった。

 閉鎖環境試験モジュール管理AIが異変に気付いたのは誰よりも早かった。

 複数の低階層でのバイタルサインの転調、低下、停止の報告が次々と上がってくる。レポートを確認したAIは三階層以下の隔壁の完全封鎖を開始した。

 その間もバイタルレポートは上がり続けていた。

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