第8話

じゃあ、ちょっと休憩にしようかな。


と塾の先生がいう。


あ、佐々木さん。


「見てみて!私も猫の絵描いてみたの。」


「うわっ。すっごく上手!佐々木さんって勉強もできるし、絵も上手なんだね。」


私の適当にかいた落書きが恥ずかしくなるくらい、かわいらしい猫のイラストが描かれている。


「えへへ。。私、絵描くの好きなんだよね。佐々木さんじゃなくて、みっくで良いよ。」


佐々木美久(みく)だから、みっく。


「家に帰っても暇だし、最近は絵かいてるんだ。あはは。」


そうそう、佐々木さんって一人っ子なんだよね。

弥生は、佐々木さんと話したことを思い出した。

〜〜

いつだっただろうか。

弥生のトートバッグをみて、「そのカバン、嵐のでしょ??」と話しかけてきた。


「そうだよ!お姉ちゃんがコンサートに行った時に、買ってくれたんだー。」


と弥生が答えると、


「いいなあ。私、一人っ子だからさ、お姉ちゃんって憧れる。」


と言っていた。


「いいかなあ??」


お姉ちゃんがいて良かったとか考えたこともなかった。

当たり前だって思ってたから。

だけど、お姉ちゃんがいない人もいるのか。


「兄弟いいなあ。だって1人だとさ、家に帰っても暇だしつまんないよ。お姉ちゃんとお兄ちゃんとかいたら楽しいだろうなあ、って思う。」


と、佐々木さんは言って、寂しそうに笑った。


「そうかなあ。

すぐ喧嘩になるから、私は一人っ子のほうが羨ましいかな。」

と弥生が言うと、


「喧嘩になるの?弥生ちゃんの家、面白い。」

といってみっくは笑っていた。


喧嘩なんていつものことだし、全然面白くないんだけどな、、ムカつくだけで。


と弥生ちゃんはそのとき不思議に思っていた。

〜〜〜


生徒たちが帰る準備をしたり、教室から出たりしている。


弥生も帰ろうとして、机の上を片付けながは黒板の方を見た。

佐々木さんが先生と何か話している。

いつものことだ。


佐々木さんと目があった。


佐々木さんは「先生に質問してるの。」と言って、笑いながら手を振った。


やっぱり真面目だな、と弥生は思った。


外に出ると、もう真っ暗だった。

9時を過ぎている。

いつも塾が終わったらお母さんが車で迎えにきてくれる。

お母さんは近くまできたら、弥生のケータイに電話をかけるのだった。

ケータイを見ると、着信はない。


・・・。

塾の外へ、授業が終わった生徒たちがでてくる。


「あっ。」


見覚えのある人がてできた。


「まだいたの?」


と佐々木さん。


うん。お母さん、まだだから。


「そうなんだ、私も迎え待たなきゃ。」


塾の前には、弥生たちのように、親の迎えを待っているのだろう。

何人か子供が立っている。


佐々木さんって猫好き?


「好きというか、嫌いじゃないけど、、どうしたの?」


だって猫の絵をあんなに上手にかけるんだもん。

それに・・・

弥生ちゃんは喋る猫のことを話した。

もしかしたら分かってくれるかもしれない。


「喋る猫??なにそれ、本当?!すごっ。」


佐々木さんはキラキラした目で弥生のことを見た。

真由ちゃんと幸ちゃんとは違う反応。

弥生は嬉しかった。まさか、佐々木さんがこんなに喜んでるなんて、ちょっと意外。


三つ葉山の公園で見つけたの。黒猫でね、小さくてかわいいの。性格はムカつくんだけどね。佐々木さんも見たい?


「三つ葉山って、きいたことある。塾の近くにある山だよね。弥生ちゃんすごい!一人で行くなんて。それに、その、、ばけねこっていうの?を見つけるのもすごい!」


えへへ。でも、佐々木さんがこういう話興味あると思わなかった。笑

いつも勉強してるイメージがあったから。


「よく言われる。笑

私、そんなにガリ勉っぽく見えるかな?

面白いこととか楽しいこととか好きだよ!

探検とかも!」


じゃあ、明日、学校終わったら、塾の前で待ち合わせしよっ!


「オッケー。」


弥生のケータイが鳴っている。


あ、お母さんが迎えにきたみたい。


ばいばい、みっく。


「うん、明日ね。」

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