第7話

ばいばい、


と真由ちゃんとさっちゃんに手を振って、歩き出した。

弥生はどんよりと曇った空を見上げた。


ねこ、いるかな。


三つ葉山を登っていく。

山道には緑の木が生い茂っている。

弥生は、木の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。


にゃん。


と、木の茂みから、何かが飛び出してきた。


みると、黒猫ではないか。


あのばけねこだ!


黒猫は、かわいい黄色の瞳で弥生を見つめている。


かわいい〜


もしかしてこの猫、私に会いたがってたのかな?

この前あんまり話せなかったから。


かわいいなー、こいつー!!


弥生は黒猫に近づいていった。


ねこちゃんっ。元気??


弥生は背中を撫でながら話しかけた。


すると、ねこは、


「ちゃんっていうな」


といって、迷惑そうな顔をした。


えっ。


弥生が困っていると、


「俺はねこちゃんって呼ばれるのが世界一嫌いなんだよ。」


「俺様に向かってちゃんって呼ぶなんて100年はやいぞ。猫様と呼べ。」


あれ


このねこって喋り方こんな感じだったっけ、、?


性格変わった?


「はあ」


と弥生が答えると、


「分かったならよし!」


と黒猫がいった。


「えっと、、あの、、ねこ、様。」


「なんだ、小学生。」


「あ、いや、えっと、、、

今日は天気が良い、ですね。」


「うむ。曇り空だか、悪い天気ではない。」


「・・・」


弥生は何を話せば良いのか分からずに黙ってしまった。


よく考えればたかが猫相手にこんなに真剣に話しているのがバカみたいである。


撫でてみると、気持ちよさそうな顔をしている。


ふにゃ〜


試しに二つに分かれたしっぽを引っ張ってみる。


すると、


ギャー!


と声を出して、逃げた。


遠くから


「俺はしっぽを触られるのが嫌なんだよ!」


と言っている。


弥生はニヤリと笑った。


「はは〜しっぽが弱点なのか。」


「なんだ・・・」


「えへへ。」


しっぽを触ろうとすると、すごい速さで逃げていく。


「あ、待て待て。」


嫌だ!!



弥生は塾に行った。

授業中、黒猫のことを思い出していた。


ちゃんっていうな


俺はねこちゃんって呼ばれるのが世界一嫌いなんだよ


猫様と呼べ。


な〜〜〜にが猫様だ。

猫の分際で人間に偉そうに口を聞くなんて。

思い出しただけでもイラッとくる。


でも、あの顔。

しっぽを触ったら、すごく嫌がってたな。


クスクス。


ついつい思い出し笑いをしてしまう。


休憩時間。


佐々木さんが話しにきた。

笑いながら

「はあ〜、授業疲れたあ。」という。


弥生も疲れたねー、と返事をした。


佐々木さんは

「あれ、何書いてるのー?」といいながら、

プリントを覗きこんできた。


プリントの端っこに、絵をかいていた。


「ねこ?黒猫かな?」

と佐々木さん。かわいいー、と笑っている。


弥生もえへっ、と笑った。


この猫、性格は全然かわいくないけどね。と心の中で言いながら。


私、猫好きなんだあ。と佐々木さん。


先生が、


そろそろ席に戻ってくださーい


と言う。


休憩時間が終わるのだ。


佐々木さんが戻ろうとして、

あ、

と何か言いたそうにこっちを見た。


次の授業中、私もこっそり絵かいてみようかなっ。


そういうと、佐々木さんはいたずらっ子のように笑った。

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