第2話 ゴムって大事だよね
僕と
例の空き教室がヤリ部屋と噂される理由にも納得できる。足音が響くから誰かが近付くとすぐにわかるんだ。僕にはその経験がないので行為中はどれくらい周囲に意識を向けられるかわからないけど。
「
「そそそそそうです。一人では毎日してるんだけどね」
前を歩く
突然話しかけられたのと緊張で余計な情報を口走ってしまう。
どこの世界にクラスメイトのシコ事情を知りたい女子がいるんだ。
「わたしもなんだ。毎日しないとなんだかモヤモヤしちゃうよね」
確実にこの第一校舎には僕ら以外に誰もいない。教室の外に誘いだしたのは
「わかるわかる。僕も早くしたくて」
「ふふ。
やっぱりだ!
肌の露出を抑える長いスカートの向こう側には男子高校生の楽園が存在している。一見すると男を寄せ付けない不落の城に思える
女子を前にすると一言も喋れなくなる童貞の中の童貞、僕の数少ない友達である川瀬の見立てが合っていたことにも驚かざるを得ない。
「わたし、男子と話すのってあんまり得意じゃないんだけど、
「それは光栄だ。ははは」
教室で
まさか僕の知らないところでこんな事をしていたなんて全く想像もしていなかった。
日頃から露出の多い女子と接点の多い陽キャまでもが
「
「僕は普通に誰にも見られない所かな」
「それも良いよね。意外と溜まってたりするし。わたしは逆にみんながいる場所が多いかな」
「へ、へえ。誰かに見られる心配はないの?」
「初めのうちは視線が痛い時もあったけど、毎日してたらみんなも慣れたみたいであんまり気にされなくなったかな」
「そういうものなの!?」
自分の声が廊下に響いた。みんなも慣れたということは大衆の目に晒されていたということだ。こんなのヤリ部屋なんて比べ物にならない。いくら友達が少なくて学校の情報に疎いと言ってもさすがにこれはラインを越えている。
まさか口止め料として
「ところで
「ゴム? あ、ごめん。持ってない。そうだよね。さすがに直接はね」
「うん。どんな病気になるかわからないから」
「ごごごごめん! 持ち合わせがないからまた後日でも……あはは」
彼女もいない童貞陰キャがゴムなんて持ち歩いているはずがない。そもそも高校生でも買えるものなのだろうか。あまりにもそういう経験とシチュエーションに縁がなさすぎて、ただ乾いた笑いで誤魔化すことしかできない。
それにさっきまでギンギンだった我が息子は少しずつしぼみ始めていた。自分と同じ側の人間だと思っていた
「大丈夫。わたしが持ってるから」
「準備がいいんだね」
「うん。毎日使うからね」
もう逃げられない。僕は大衆の面前で初体験を捧げるんだ。下手したら緊張で縮こまった息子を晒すことになる。そんなことになったら僕の高校生活は笑い者のまま終わっていく。
勢いでスマホの電源を落としたことを後悔した。あのまま電源を入れておけば川瀬からの着信を理由に逃げられたかもしれないのに。
すまん川瀬。やっぱり僕はお前を選ぶべきだった。今となってはあいつのゲスい笑顔すら愛おしく思える。
「ゴムって大事だよね。たまに付けたがらない人がいるけど、やっぱり安心感がないとちゃんとできないと思うんだ」
「そそそそそそうだね」
おさげを手で撫でながら
その
「
「ここ、誰かに見られないかな?」
「見えない所も大事だけど、普段人が通る所でやらないと意味ないよ?」
「
彼女は毎日していると言っていた。つまり、今日まで何のお咎めもないということだ。僕は
まずは体の動きが制限されるブレザーを勢いよく脱ぎ捨てた。毎日スルスルと外しているはずのネクタイはなぜか結び目がキツくなってしまい断念する。
「ふふ。
「もちろん。
「そんな風に言ってもらえると嬉しいな。ならわたしも」
「それじゃあ始めよっか」
彼女はそう言うとカバンの中をごそごそとあさり始めた。きっとあの中にゴムが入っているんだ。大人しそうな顔で授業を受けているのにその裏ではアレをするための道具を常に持ち歩いているなんて……。一体何人のクラスメイトがこの事実を知っているのだろうか。
僕は
足音で一歩ずつ
ああ、そうか。まずはキスから初めて少しずつ脱いでいくんだ。初体験な上に屋外だから全然作法がわからない。
お父さん、お母さん。突然ですが僕は今日オトナになります!
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