湖
湖は月が好きだった。
夜しか会えぬ、その人を。
いつだって優しい光で包んでくれるその人を。
しかし、月は、そんな湖のことなど知らない。
ただ、湖は見ていた。
見ているだけだった。
こんな地面に這いつくばるだけの存在が、何をおこがましいことを思うのだろう。
月は遠い。
とても遠い、世界の全てを見渡せる場所で、全てのものを包んでくれる。
そんな大きな存在が、こんな地面の湖などを見てくれるはずもない。
ただ、湖は、恋い焦がれる月を、自分に映す。
自分に映し、月を抱いている気分になる。
湖は空には届かない。
それでも、毎夜、月を自分に映しては、想うのだ。
これは、月のことを好きな、湖の恋物語。
月と湖の恋物語 みこ @mikoto_chan
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