月と湖の恋物語
みこ
月
月は湖が好きだった。
夜しか会えぬ、その人を。
夜の光でキラキラ光るその人を。
しかし、湖は、そんな月のことなど知らない。
ただ、月は見ていた。
見ているだけだった。
だって、湖は、いつでも綺麗な人を抱いていたから。
その人はどことなく月に似ていた。
けれど、月よりも柔らかい光で、湖に抱かれていた。
愛する人がいるのなら、私が届けるものはない。
言いたいけれど、言うことはできない。
月は地面に降りることはできない。
星たちが囁く。
「あんなプレイボーイ、やめておしまいなさいよ」
「あなたは湖に抱かれることも叶わないのよ」
「だって湖は、あなたの存在すら、知らないのだから」
月は悲しみで欠けていく。
それでも毎夜、湖を眺めては、想うのだ。
これは、湖のことを好きな、月の恋物語。
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