八章 謎解き②〜拾っていた人の理由は?〜
「まずは、あなたの話を聞く前に、私の推理を聞いてください。そうでなきゃ、謎を解いたことになりませんから。私なりに、あなたが何故空き缶を拾っているか考えました」
私は彼女が話しているのを遮って、そう言った。
「いいわよ。名探偵さんの推理を、ぜひ聞かせて」
「私は空き缶を拾うのは、まず子供のためだと思いました。あなたは子供を特別大切にしています。それは公園でお子さんと接している姿を見ていてわかりました。あんな笑顔を向けられるのですから」
私は女性の行動を思い出しながら話している。
親が子を思うのは当たり前だけど、普通の人たちの思いより、強い何かを私はあのとき感じた。
「そうね」
彼女は優しく話を聞いてくれている。
「子供のために、空き缶を集めている理由はなんだろうかと考えました。それは空き缶の、例えば一部を集めているのではないかと思いました。子供はそういうの集めるの好きですよね。自分だけの宝物みたいに思いますよね。例えば、『プルタブ』とか。あの缶についている取っ手です。実際に捨てられていた空き缶には、すべてプルタブがついたままだった。それとあなたのお子さん、少し体が弱いですよね。公園にいたときも他の子より息が上がるのが早かったです。この謎には、きっとそれも関係しているはずです。そうであるなら、空き缶を拾う理由は、体の弱いお子さんのお願いではないですか?」
「ここまでが私の推理です。では、あなたの口から、真相を教えて下さい」
私は最後にそう言った。答え合わせをしたいからだ。
「真相ねえ。いいわよ、教えてあげる。空き缶を拾っていた理由は、あなたの推理通りよ。そこまでわかるなんて正直驚いたわ。あとは、その背景に何があったかね。ある日公園に行くと、子供がどうしても落ちている空き缶のプルタブがほしいと言ったのよ。かっこいいからって言ってた。わがままなんて今まで言う子じゃなかった。あなたの言うとおり、体が弱いから好きなことを今までさせてあげれないことが多かった。そんな子の小さな願いを叶えてあげたいと必死になるのは、おかしなことじゃないでしょ。私はあの子のために、あの子が喜ぶために何かがしたかった。傍から見ればおかしな行動かもしれない。だから、拾いに行くのは深夜の2時にした。でも、それが、空き缶に関するすべての真相よ」
「なるほど。そういう背景があったのですね。これで、謎が完全に解けました」
「どう?私の話はあなたの満足のいくものだった?」
「はい、とっても。いい謎をありがとうございます」
私はすっきりした気持ちでいっぱいだった。
これが味わえるから、謎解きはやめられない。
「それはよかったわ。まあ、私は何もしてないんだけどね」
そう言って女性は、私の話を最後まで聞かず別の方向へ足を進めていったのだった。
私も、また新たな謎を探し、歩き出したのだった。
夏の暑さの中に、新しい発見があったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます