三章 「老人と再び現れた人」

 2つ目は、昼間の時間帯の張り込みだ。

 太陽は真上に上がり、段々と暑さが増してくる。

 今日は私は髪をアップしている。持久戦になるから、暑さに負けてはいけないからだ。水分も多めに持ってきている。

 私は確かに21歳と若いけれど、熱中症に若さなど関係ないから。

 発見もないのに、ホントにこの暑さは面倒だ。

 まず、私が公園に着いたときは、まだ誰もいなかった。

 もちろん、空き缶もブランコの近くにまたある。

 私はまたベンチに座り、謎について考えていた。

 今回私が考えた謎解きの仕方はこうだ。

 まずは、張り込みによる情報収集。

 次に、その情報から推理して真相に目星をつける。

 そして、謎を解く。

 最後に、張本人から真相を聞き、答え合わせをする。 



 そんなふうに考えていると、老人が一人で公園にやってきた。

 私が調べ始めてから公園に入ってきた一人目の人だ。

 腕時計を見ると、13時ちょうどだった。

 男性で、背は低く少しだけ白髪の髭が生えている。

 年齢は60代ぐらいだろう。

 拾っている人が老人だったということは大いにありえる。

 老人というのは、おせっかいで優しい人が多いから。

 そうだとすれば、この謎は単なる優しさによることなんだろうか。

 なんだかそれはしっくりこない。それだけではない気がする。

 その老人はすべり台の方に行き、軽い運動をし始めた。

 しばらく様子を見てみることにした。



 それから、次に上下ジャージ姿の男が公園にやってきた。

 時間は14時ぐらいだ。

 よく見てみると、それはあのゴミ収集車の男だった。 

 私は驚いた。この短い期間で、またこの男に会うとは思ってもいなかったからだ。

 上下ジャージ姿で服装は違うけど、特徴的な顔だったので、間違いない。

 なぜゴミ収集の男がやってくるのだろう。

 もちろん、その男はこの公園の近くに住んでいる可能性もある。

 この公園に、仕事以外で来ることがあってもおかしくはない。

 でも、何かが私の中でひっかかった。

 この公園になんの用事があるのだろう。30代の若者がわざわざ休みの日に、一人で公園に来るだろうか。しかも昨日仕事で来たばかりの公園にだ。

 本当にそれは、たまたまだろうか。

 少し怪しいなと思った。

 男は、空き缶に近づいて、じっと空き缶を見つめたり、離れたりを繰り返していた。

 それから、何人か公園にやってきた。

 私は公園にいる人の様子を、しばらく観察することにした。

 


 しかし、誰も空き缶に触れる人はいなかった。

 老人は、ずっとすべり台の近くで同じ運動をしている。

 ゴミ収集の男は、遠くから空き缶をチラチラ見ている。でも、触ることはない。

 なぜこの男はこんなに空き缶を見ているのだろう。

 何か意味があるのだろうか。

 ブランコでは子供が遊んでいる。子供は、楽しそうだ。そして、そばにいるお母さんは笑顔で何か話しかけている。

 この二人から、親密さを感じ取ることができた。

 しかし、この子供からは少しだけ違和感を感じた。他の子と比べるとすぐに疲れている。

 それが今回の謎に関係しているかはまだなんとも言えない。

 ただ今公園にいる誰しもが、空き缶を拾っている可能性はあると言える。

 


 それから17時まで、老人も、ゴミ収集車の男も、特に何かの行動には出なかった。公園にいる他の人も同様だった。

 

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