錯綜

 一色レイジに連絡を取ろうとして、LINEの友だち一覧に彼女の名前がないことに気付いた。いったいいつから? 全然分からない。サークル関係の友人知人に、近況を尋ねるふりをしてメッセージを送りまくった。みんな元気だった。それはいいんだけど、一色レイジが今どこでなにをしているかを知る者はいなかった。


『一色、市岡ヒサシの映画のせいさくやってんの!? すげー!』


 と能天気な返信を寄越したのはセージさんだ。この人は大学を卒業した二年後、わたしたちのサークルに属していたわたしの同期の女と結婚した。ふたりが交際していたということを、わたしは結婚式の招待状を受け取って初めて知った。怒りで目の前が真っ赤に染まるという経験を、初めてした。

 半年近い月日が経ち、東京も冬本番という頃、岸くんからLINEが来た。一色レイジのSNSのアカウントを見つけたという。

 また会えませんかというメッセージは無視し、情報提供に対する礼だけ述べて岸くんのことはブロックした。面倒なことになるのはごめんだ。

 SNSアプリを立ち上げ、一色レイジのアカウントを検索した。【一色】という味も素っ気もないユーザー名。最近のツイートをざっと確認したが、見た映画の話と、飼ってる猫の話しかしていない。なんなの。

 迷わずDMを送った。レイジ、明日花だよ。会おうよ。

 返信はすぐに来た。

「明日花? マジで?」

 あの頃とあまり変わっていないように、思えた。

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