第6話 本当の世界

 辿り着いた先にあったのは、雪のように真っ白な美しい球体装置。

 カレンいわく、この球体が『塔の魔術』の源であり、町に振り続けている純白の雪はこの装置によって生まれたものだと言う。


「雪を降らせる装置……? この辺りは元々豪雪地帯だろ? 何の意味があるんだよ」

「後でわかるよ。それよりどうするの? 装置を止めれば町の雪は止んで、町の門は開くよ。そしたらレネルは町の外に出られる。そして、この魔術を止められるのはレネルだけなの」


 カレンの問いには、今までにない凄みがあった。だからレネルは少しだけ悩む。

 けれど決めた。そのために今まで真実を追い続けてきたのだから。


「俺は、何があっても前に進む。スフレ姉さんともそう約束したんだ」

「……そっか。わかった」


 そしてレネルは、カレンの指示通りに『塔の魔術』が掛けられた装置を止める。


 そのまま、カレンと二人で塔の外へ出るレネル。

 装置を解除したことで雪が止み、雲が晴れて、レネルとカレンは初めて雪の降らない空を――美しい星空を見て感動する。


「すごい……これが本当の空なんだ! カレン、これで町の外に出られるぞ!」


 ようやく夢が叶う。カレンやスフレに広い世界を見せてあげられる。

 そう思ったレネルは、安堵や極度の疲労からその場に倒れてしまう。外で待機していたルドやリーリカ、スフレ、町のみんなが集まってレネルを介抱してくれた――。



 レネルは夢を見ていた。

 子供の頃の記憶。

 平和に、毎日を楽しく暮らしてきた、皆とのたくさんの思い出。


 しかし思い出は途中で途切れ――見慣れた町の人々の姿が消えていく。皆は、それぞれレネルに別れを告げていく。


 ルドとリーリカは泣いていた。


『なんでだよ……ずっとこのままじゃダメだったのかよ。オレは楽しかった。お前は違うのかよレネル! 最後に、何も言えなかった……ちくしょう……』


『レネルお兄ちゃん……。今までずっと、隠し事をしていてごめんね。お兄ちゃん……きっと、幸せに、なってね』


 二人は雪のようにハラハラと溶けていなくなる。レネルが手を伸ばしても届くことはない。


 最後に現れたのは、スフレ。

 スフレはレネルを優しく抱きしめて、額にキスをする。


『レネル……今まで、たくさんの愛をくれてありがとう。ずっと、愛してる――』


 消えていくスフレの名前を必死に呼ぶレネル。 

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