第3話 諦めない
――翌日。今度は明るい内にアルティミシアへ会いに行くレネル。
「アルティミシア! いるのか? 話がしたいんだ!」
だが返事はなかった。
町長たちは、「彼女は聖都に帰った」と説明するが、レネルは町長たちが自分に何か隠し事をしていると確信し、町人たちに不信感を抱くようになる。
そしてレネルは、真実を知るためにさらなる行動を始める――。
計画を練るレネル。しかし、子供のレネル一人ではどうしようも出来ない。
そこでレネルは、同級生であるカレン、ルド、リーリカと、姉のスフレに協力をあおぐ。
「この町はやっぱり変だ。俺は外の世界が見たい! だからみんな、一緒に本当のことを探そう!」
だが、皆はこれに否定的だった。
特に悪友のルドにはひどく馬鹿にされてしまい、二人は大ゲンカをする。
ルドは元々レネルと一番仲の良い男友達だったが、成長するにつれてケンカが多くなっていた。特に、レネルが外で冒険をしたいという話をするたびにルドの機嫌が悪くなるのだ。
だからルドに反対されるのは理解出来たが、カレンやリーリカ、何よりスフレにまで反対されてショックを受けるレネル。どうやら皆は何かを知っているが、あえてそのことをレネルに隠しているようだった。
一人だけ仲間はずれにされる疎外感から、レネルはしばらく行動を潜めるようになる。町人たちはそれに安心していた。
だが、それはレネルの作戦だった。
町の全員がレネルの行動は見張っていることはわかっていた。だからレネルは諦めたふりをしてその“監視”を緩めさせた。
その隙に塔へ侵入する方法を模索するレネルだったが、塔の鍵が必要なことがわかる。どこの誰が持っているかもわからないその鍵がなければ、目的は絶対に果たせない。
そして、同じ家に住むスフレだけは誤魔化せない。
だからレネルは、スフレにだけは本心を明かした。そして尋ねる。
「スフレ姉さんは外に出たくないの?」
「え……」
「小さな頃にスフレ姉さんが読み聞かせてくれたこの本。ここに描かれてる外の世界は広くて、たくさんの生き物が暮らしていて、俺はそういうものが見てみたい。アルティミシアにも会ってみたいんだ!」
「……レネル」
「俺は絶対諦めない。必ず町の外に出て、スフレ姉さんにたくさんの景色を見せるんだ!」
レネルの持つ絵本は、スフレからのプレゼント。英雄の冒険譚。憧れの原点。
レネルの意志の強さを知ったスフレは、今までとは一転、レネルに協力すると言ってくれる。喜ぶレネルは姉への敬愛を露わにする。だが、スフレはどこか悲しい顔をしていた――。
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