第9話

「ねぇ姉さん、マスクしたくてもできない人っているじゃん?ああいう人たちってお店入れるのかな」

「マスクをしない人じゃなくて、感覚過敏でマスクが出来ない人のことかしら?」

「そう」

「可哀想だけれど入ることは出来ないんじゃないかしら。本人たちもこわいだろうしね。感染症も、人の目も」

「『感覚過敏です』っていうステッカーでもあればいいのかなぁ。僕も花粉症だから最近くしゃみとか嫌がられるしさ、『花粉症です』っていうステッカー服に貼って歩きたいぐらいだよ」

「まぁ世間が敏感になってる今難しいわよね。感覚過敏の場合はテレワークや通販なんかでなるべく家から出ないように過ごすのかしら。どうしても外に出なくちゃいけない時はとても辛いでしょうね」

「そうだよね。本人だって本当はマスクしたいのに感覚過敏のせいで出来ないのをあの人マスクしてないよなんて言われたくないよねー」

「マスク以外にもアルコール消毒できない人とかも困るわね。あと平熱が高めの人とかも」

「確かに。一般的には問題ないように見えて、結構問題って転がってるよね。この生活に慣れてきた僕達は平気でも、この生活のおかげで逆に苦しくなる人もいるんだ」

「そうね。全ての人が何事にも適応できる訳じゃないということがよく分かるわ」

「僕達だって適応障害だしねー」

「環境が変われば適応できたり出来なかったり…どんな環境にでも適応できる人はすごいわよね。羨ましいわ」

「姉さんでも羨ましいとか思うことあるんだ」

「そりゃそうでしょう。どんな環境にでも適応できるならそれはそれでストレスの要因がひとつ減るということよ。羨ましいことだわ」

「まあね。でもさ、逆に考えると僕たちが完璧に活躍出来る環境があるとしたらそこでは僕達は普通に生きれるんだろうね」

「…そうね。一にしてはいいこと言うわね。…そんな環境があればいいのに」

「それぞれがそれぞれ輝ける環境か…これまた難しいなぁー」

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