第4話 汚物は消毒


俺とバイクは宙を舞っていた。

巨大な月、舞う血しぶきに俺は困惑していた。

このまま、なんとか安全に着地しなくてはならない。

俺の描く放物線は頂点に――心臓が重力に引かれ始める。

前輪を上げ後輪を下げる――ウィリーのような体制で俺は落ちる。


ダンッ! ――一気にアクセルを回す!


ギュオオオオオオオオオオオオオオ!!!


後輪にて着地――ぬかるんだ地面が掘り起こされる。ドロの飛沫を上げながら俺とバイクは突き進む。

「ヒャハアアアアアアアアーーーーー!!!」

俺は恐怖で叫びを上げる。

こんな曲芸乗りをしたことなんて生まれてはじめてだ。

前輪で魔物を何体も吹き飛ばして、バイクはやっと止まった。

「ヒャハッッ!!!」


緊張で血が頭に上る。倒れそうな感覚を我慢して俺は周りを見た。

何体もの痩せこけた人間のような生物が俺の方をジッと見ていた。

ぽっかり開けた口から血が滴り落ちる――その手に持つのは人間の……肉!?


「勇者様……――――ッ!!!」


小さな魔物――ゴブリンに組み伏せられた少女が叫ぶ。


「GBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB!!!」

「GBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB!!!!!」

「GBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBBB!!!!!!!!!」


混乱状態から立ち直り始めるゴブリンたち。

獲物を手に手に、俺に向かってくる!

俺は……戦うのか…?

なにか武器はないか……俺は車載工具のモンキーレンチを左手に、アクセルを捻る。


ギュィイイン!


――汚物は消毒だ!!

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