04

 彼の足と腕の、プロテクター。たぶん、左腕と右足。


「よかった、プロテクター着させといて」


 プロテクターがなかったら、腕も足も千切れ飛んでいただろうに。そんなになるまで。なぜ、死のうとするのか。

 彼を探す。たぶん動けなくなっているだろうから、どこかの物陰だろう。這いずった跡を見つけたので、追っていく。

 彼がいた。うつぶせ。大の字に転がっている。


「おつかれさま」


 彼を蹴飛ばして、あおむけにする。身体の各部確認。大丈夫。全部正常。


「あの」


「なに?」


「腕と足が。もげました。右足と左腕。繋がないと」


 頭をやられたのか。どうやら、右足と左腕の感覚がないらしい。大丈夫だという言葉を、呑み込んだ。彼は、今、混乱している。


「今なら」


 今なら。

 気付かれないかも、しれない。


「ん」


 彼の頬に顔を寄せて。

 キスをする。


 すすけた味がした。

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