第3話

 右足と左腕が吹っ飛んだ。

 止血の必要はない。傷口は焼けて、美味しそうな匂いを出している。


「食えそうだな」


 これは、治すのにまた金がかかるな。足と手がないと困る。

 片足と片腕で、ゆっくりと這っていく。爆発には巻き込まれたけど、仕事は終わった。こうやって這いつくばって動くのも、慣れている。頭と胸が吹っ飛ばないかぎり、だいたい死なない。


 そう。


 いつも。


 彼女が助けに来る。


 彼女が、いつも助けてしまうから。


 自分は生き残る。


「ぐっ」


 残った右手で、何か、自分を殺せるかもしれないものを探った。

 拳銃。あのとき、彼女から貰っておくべきだった。いま撃てば、死ねるのに。

 誰かのために。何かのために。そうやって仕事をこなしても、結局は、自分が死にたいだけ。楽しんで、誰かの役に立ったなと思うその瞬間に、命を終わらせたいだけ。


みじめだ」


 足と腕を吹っ飛ばされてなお、死なない自分。死ねない自分。


「何が、誰かのためにだ。死にたいだけなのに」


 死にたいだけなのに。

 彼女を待っている、自分がいる。

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