お好みは?

「コーヒーにミルク入れる?」

「ありがとう、お願い」

食事の後、ソファに寝そべりスマホでニュースを流し読みする。


うわ、うわ、あぁぁぁぁ!

俺のサトミ(仮名)が結婚してる!!

「きみのじゃないでしょう」

ツッコミありがとう。


くりっとした瞳とぽってり唇が魅力的な、俺の大好きな女優さん。

自分が歳を取るように相手も適齢期になり、どんどん既婚者になっていく。


「きみは好きなタイプが良く変わるねぇ。

 今度は誰になるのかな?」

あなたの事は一生変わらないから安心して。

ぐっと堪える。

「ちなみに僕はシオリちゃん(仮名)みたいな笑顔溢れる娘が好き」

「…………そうなんだ。

 バイトちゃんってちょっと似てるよな、そういう意味もあって気になってた訳?」

面白そうにくすくす笑う。

「蒸し返すね、熱いから気を付けて」


始めは彼女に対する嫉妬だったが、彼女が恋した俺様講師とあなたとの微妙な仲の良さも原因だった。

というか、あなたが一方的に茶化して楽しんでるだけだけど。

そういうのも全部俺だけにやって欲しい。

あぁぁ、こういうのはいかんな!


正直、好みのタイプで女性芸能人が出てくるとは思わなかった。

俺にとってのそういうのはあくまでも理想でしかないから構わないかなと軽々しく話している。

でも、あなたから男性名が出てたら………。

同じように聞き流せる自信がない。

なのに、参考までに知りたい気持ちもある。

この矛盾する想いが顔に出っちゃったんだろうなぁ。

「なに、好みの男性芸能人が知りたいの?

 参考にして目指しちゃう?」


意地悪だ。

そういう人だったよ、あなたは。

「一瞬思ったけど絶対妬くからやめとく。

 それにあれだろ、何だかんだ言って『僕の好みはきみだけだよ』なんてくっさい事言うんだろ」

ふふん、先手必勝だ。

「良くわかってるじゃない、成長したねぇ」

いいこいいこ、で返しやがる。

結局、言い負かされて丸め込まれて終わる。

今に見てろよ、ギャフンと言わせてやる。


◆ ◆ ◆


ぎゃふ!

何だよ、ズルいじゃない。

いつの間にか反論が上手くなってて。

悔しいんですけど。

嬉しいけど。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る