習慣

今日も一日お疲れ様です。

冷たいベッドに潜り込む。

あぁ、我が愛しの湯たんぽよ。

ごめん、あなたじゃなくて本物のやつ。


「寝始めに胸の上に手置くのやめたら?」

たまに魘されるからずっと気になって仕方がない事を指摘する。

「それとこれは無関係だよ。安心して寝入る習慣と言えばいいかな。きみには無い?」


余り気にしたことがなかったな。

あなたの方を向いて寝るくらい。

上向いてもリラックス直立だし。

あぁ、そう言えば、あった。

「こういう寒い日はさ、シーツが冷たいから接触部分を狭めようと細く纏まって、ケツの下に手を敷いて凌いだりする」


「股に挟むとかは良く聞くけど、初めてだよそういうの。仰向けで、手を……」

試してみるらしくモゾモゾしている。

やるんだ、と呟くと

「きみの一部を体験してみようかと。

 新しい習慣になるかも知れないし」

などと言われて嬉しくなるのはデレ過ぎか。


「逆に手の甲が寒いし、掌の所在なさが気持ち悪い、お尻を揉めばいい?」

「ぷっ、違う違う、掌を下にするんだよ。冷たさ減るから」

「だとしても………判らないなぁ。人それぞれだね。でも、ひとつ確かなことは……」


はいはい、判ってますよ。

あなたに向き直り迎え入れる準備を整える。


「湯たんぽは正義だね、おやすみ」

俺の足元からほかほかの温もりを奪い、背を向けて寝る姿勢を整える。

「ちょっと、待てぇい!!」

あはは、と楽しそうに笑うあなた。


仕方がない、今夜はあなたという人間湯たんぽを抱き締めよう。






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