age29

制限解除

「対比がおかしくないですか?」

並ぶ布団に寝転び甘い空気が漂うなか。

俺の首に腕を回し長い睫毛をぱちくりさせて見上げるあなたは当然こう返す。

「どういうこと?」


抱きつ抱かれつで改めて始めた関係は、願掛け期間を挟んだせいか、気付けば10対0から6対4にまで縮んでいる。

…………早くない?

「そうは言っても、今まさに、僕はきみに組み敷かれてるのだけれど」


そうですよ、俺がしたい時はこうですよ。

だが、しかし!

気付くと逆転してることが、まま有るんですよ、そのところ、どう考えてるのかな先生。


「名前で呼べ。

 3年分を取り戻そうと逸り過ぎたかな。

 そうか、僕に抱かれるのは嫌なんだ……」

はい、そういう可愛いいは効きません。


「明日は誕生日だというのに前夜祭のこの仕打ちは酷くないかな」

そりゃ、ね、元バイトちゃんに聞いた、巷で噂のパワハラ城を彷彿とさせる旅館の露天風呂つき客室でまったりとお祝いするつもりで来ましたよ。


「ごめんなさい、今じゃなかったです。

 お詫びに何でもします、あなたはどうして欲しい?」

「うーん……」

沈黙が流れる。

「趣向を凝らして緊縛でもしてみるか、手始めに目隠しだな」

「それはきみの望みで僕のじゃない、って人の話を聞きなさいよ。

 ちょっと、本当に見えない!!」

「お化け屋敷みたいな刺激ですよ。手探り状態で突然触るとドキンッとするじゃん?

 それよ、それ。ふふん、ふん♪」


案の定、肩に触れるだけでビクつくところに興奮を覚える男の性。

探る腕を押さえつけ思わず唇を重ね、そして触れる。

舌先で。

「ちょ、ちょっと待って、それ……!」

「苦手だからとあなたに止められてたけど、やめる?続ける?」

突然の出来事に半ば身を起こし、目隠しをずらしてガチで恥じらうその姿が益々そそる。

「ごめん………………続けて」


どれだけ想われてきたのかと喜びしかない。

もしもの時の為にと、俺を抱くこととセットで禁じてきたであろうこの行為の縛りを解いて、改めてあなたの誕生日を祝いたかった。

この身はすべてあなたの為に尽くします。


「た……頼むから、やる前に言って……」

一息ついても顔を覆って耳を真っ赤に横たわるあなた。

言いましたよね、間違いなく。

え、もしかして急襲とかに弱い人?

うーん、これからが本番なんだけど。

ヤバイな、悪戯心に拍車がかかるぞ。

「これからも聞く?」

「勘弁してよ!!」


うわぁ、新鮮だなぁ。

「もうすぐ明日ですよー、因みに何時に生まれたの?」

「知らないよそんなの………ちょっと顔見るなって!せめて電気を消せ!」

可愛い、実に可愛いなぁ、その照れ方。

語彙がそれしか浮かばない。


ふと時計が目に入り、頭の中で時報がなる。

ピッピッピッ、ポーン♪


「35才の区切り善き誕生日おめでとう。

 俺の大切なかわいいあなた」

やれやれと溜め息をついての上目遣い。

「………ありがとう、一言多い愛しいきみ」


ご希望通り明かりは消せども、最高明度の月明かりで隅々まで丸見えです、先生。

「ぺしっ!名前で呼べ!」

あいた!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る