ぶつぶつ つぶやくな! in your heart

age28/第六話のご迷惑

「休み前だし、たまにはサシで飲もうよ」

事務テーブルにアルコールが並ぶ。

嫌な予感しかない。

案の定、愚痴が始まる。


「僕、辞めるかもしれない」


「また何処かへ逃げるのか」


「容赦ないなぁ、せめて酔い始めてからにしてくれないかな」


「早く帰れ、家で飲め」


「ギリギリまで帰りたくないんだよ、聞き流していいからちょっと呟かせて」


「帰れ」


「もう、別れようと思って。

 僕みたいなのは一緒になると必然的に役割が決まるじゃない?僕は割りと攻め気味に生きてきたんだよね。

 同類ならばいいのだけど、ストレートの彼にはさすがに言えなくて、結果受け入れることにしたんだ。


 あぁ、別にそれは構わないんだ。不思議と嫌だと感じたことは一度もないし。

 でもね、根幹では何か積もってたのかな。

 最近さぁ、例えばヘソ出して無防備に寝られると強引に捩じ伏せて突っ込みたくなるんだよねぇ。

 ヤバイよねぇ、これ。

 自分で処理するとしても、好きな人が側にいるとそれだけで済まないところって有るじゃない?

 何か、もう、つらくてね。


 そんなところに、彼、元同僚ちゃんと再会したらしくてたまに連絡し合ってるんだ。

 これは、もう、利用するしかないでしょう。

 別れた後の事も考えて制限もかけてたし、彼はたまたま僕に会って横道に逸れただけだからここで軌道修正すれば互いに良いこと間違いない、と。

 今、その為に画策中なんだ。

 万が一の保険も掛けて」


「責任も取れないなら始めるな」


「確かにね、何で始めちゃったんだろうね。

 こんなにも続くと思ってなかったし、想いが同じと判って嬉しくて舞い上がっちゃったんだろうね。

 ところで、きみが先に進まないのはそういう理由? 」


「今すぐ帰れ、逃げた先には何もない」


「もう、苦しいのはたくさんなんだよ」


「ここで築いた繋がりもあっさり捨てていくのか?」


「珍しい、随分感傷的なこと言うじゃない」


「能力は買ってるんでな。どうせ失敗に終わるのによくやるよ、俺には判らん」


「そっちは始まってもいないからねぇ、どうするの、このまま黙り決め込むの?」


「呟き終わったなら帰れ」


「いいんだよぅ、お悩み聞いてあげるよぅ」


「ちょっと待て、どれだけ呑んでんだ?」


「んー、いい感じくらい。あ、溢しちゃった」


「あのなぁ、動くなよ、待ってろ」


「はぁ…………ずっと側に居たい、離れたくない、滅茶苦茶抱きたい、ボロボロになろうがどんだけ泣き喚こうが知ったこっちゃない、思う存分突きまくって心行くまで中で感じた…………いたっ!!」


「学習の場でエロ暴言吐くな、自分で拭け」


「うぅぅ、酷い、優しさが足りない……悲しい……ぅん、眠い」


「寝るな、帰れ、おい、起きろって…………

ちっ、全く」


指紋認証解錠、アプリ起動、トーク選択、写真撮影、メッセージと共に送信。


はぁ、迷惑極まりない。

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