第五話

うぅ、この為の数々の演出を台無しにしてしまった!

「本当にね。きみらしい独走に、長い時間かけて用意した台詞も思わず吹き飛んじゃったよ。

 でも、揺るぎない想いが聞けて幸せだよ」


改めて向き直り聞いてみる。

「……隣座っていい?」

「訪日観光客のフリして乗ったから駄目」

「……手繋ぎたい」

「降りたら考えよう」

「……抱き締めるのは?」

「部屋に戻ればね」

「……キスもしたい」

「眠るまで幾らでも」

「…………ケイ」

「何、ハルト?」

「これまでもこれからも愛してる」

「僕も全身全霊で愛し続けるよ」


◆  ◆  ◆


「ところで、何故僕達は追加料金なしに透明ゴンドラに乗っているのかな?」


「誰かさんが観光客ぶるからだろ!

 折角の最終客なのにイチャコラも出来ない……ちゅっ?」


「ごめん、我慢できなかった。

 お尻がムズる、恐いから側に居させて」


「仕方ないなぁ。

 ついでにとことん見せつけてやろう!」


多様に点滅する溢れる光と月の光が俺たちを浮かび上がらせる。

「節目の時はいつも満月な気がする」

と呟くと

「今頃気付いたの?」

としたり顔で返す。

「僕たちにはぴったりじゃない?」


ダ ケイ〉

    と

〈ツ ハルト〉


これでもかとキスをし、抱き合い、肩を並べて、消え入り始める夜景を楽しむ。

恥ずかしさなんて有るもんか。

今日の俺たちはいつにも増して最強だ!!


「改めて思うけど、きみの語彙力って……」

「それは作者に言ってください」


━━━申し訳ありません。

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