あなた色の煌めきを

夜も大分更けたが今のうちに手を打とう。

「例の野郎共とは早く縁切ってくださいよ」


先程までとはまた違う済まなそうな顔をしてあなたは語る。

「ワイン君は単なる飲み仲間。

 半裸君は僕の様子を見に来た親友、因みに教授の甥。」


「あなたに講義任せてサボりまくってた、あの教授の?」


「彼の留学先が僕のいた大学で意気投合し今に至る。こちらに来るきっかけを作ってくれた、友人にして理解者だからご心配なく。

 そういえば、転職先を頼んでいたことをすっかり忘れていた」


「また失踪するつもりだったのか。

 懲りないな!

 舌出して誤魔化すなよ!」


「『てへペロ』が通じない。

 年代差を感じるな。

 やっぱり別れた方がいいのかな」


知らない訳がない。

使わなかっただけだし。

……無性に腹が立ちました。

両頬をぺしっと挟んで説教してやる。


「いい加減俺を試すのはやめろ!

 あなたは普段歯が浮く台詞を連発するくせに、肝心なときに言葉の選択を間違える。

 いいか、今後ネタで『別れる』なんて言ってみろ、今生の別れにしてやるからな!」


叱られたワンコの様にショボくれた顔。

こんな一面もあるんだな。

「……肝に銘じます、と口約束しか出来ないけど、交わしておく」


胸ぐらを掴まれ、突然の、ちゅっ。

「……そういう事は遠回しにすんなって。

 同意の上でないと一方的な押し売りと同じだろ、ちょっと、聞いてる、先生」


「……先生はやめろ、……名前で呼べ」

今度は拗ねた猫か、口調が荒れてるぞ。


「……笑うな」

今まで見せなかった表情がこんなに有ったのか、猫被りめ。これまで以上に愛しくて堪らないじゃないか。


「きみの前では格好つけたいのも僕だし、心の中で大騒ぎしてるのも僕なんだよ……。

 本音でぶつかるんだから良いだろ、別に」


俯いたせいで目元に掛かる髪を退かす。

あなたの潤む長い睫毛にくちづける。

「背、縮んだ?」

「失礼な、おじさん扱いするな」

そして消え入るような声で呟く。

「…………ありがとう」


いつからか目線を僅かに上げるようになったあなたを、夜更けに洩れる月明かりが煌々と照らし出す。


月も太陽も比にならない

俺だけの大切な光を。

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