第十一話

最後だから洗わせてと、腰砕けな俺の髪にあなたのしなやかな指が絡む。


沈黙に耐えきれず口を開く。

「俺はやっぱりお払い箱な訳?」

ややあって答える。

自分と居ても明るい未来は望めないからと。


体裁よりお先真っ暗な俺の精神を心配しろ。


「元同僚ちゃんが居るじゃない」

即座に答える。

会う度断りを入れる相手をどうせよと。


「関係を持った娘を振りまくるような人間性だとは、意外だね」

「そういうんじゃないって!

 あれは、女子相手でも元気になりますよって意味で……いでっ!」


力みすぎ、しかも爪立ってるし。

「腹立つのはこっちだよ、二人の事をいつも自分だけで決めやがって。

 最初に『2度と離れない』って言ったろ、尊重しろよ!」

「…………忘れたよ、そんなこと」


あなたの言葉はそれきり続く事はなく、結露の雫だけがぽちゃんと規則的に響く。

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