忘れ物

久し振りだからネクタイの結び方を忘れた、とうそぶいてみる。

「しょうがないなぁ。ん、んんん、あれ、どうだっけ?」


対面じゃなければ出来る?

「あぁ、そうか、そこに座って」



ネクタイを首に掛けシュルシュルと結ぶ。

後ろから掛けられる広げた首回りの輪。


「はい出来た、あとは自分で締めて」


「…………まさかそう来るとは」


「ん?」


「背中越しに直接結んでくれると期待してたんだけど。まあ、きみらしいかな」


「長さ変だった?」


「丁度いいよ、そろそろ出ようかな」


「忘れ物ない、スマホは、傘持った?」


「大丈夫だよ、いってきます」


「気を付けて」


「あぁ、忘れ物あった、ちゅっ。

 今回は泊まりだから寂しくなったらいつでも連絡しなさい。ちゅっ」


パタン。

『………………!!』

ふふふ、連絡が待ち遠しい。

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