上昇中

「あれから運動はしてないの?」

そう聞かれて、暫く身体を動かしていない事に気付く。

事故前ほどガッツリは動けないが、肩慣らし程度なら可能だ。


「最近運動不足だから、もし良かったら相手になってくれない?」

おおぉ、よろこんで!!


結構やるじゃん!

あ、やべ、取り零し!

次は飲み物賭けよう!

はい、アウト、いやいや間違いないって!

あちゃー、サーブ入んないし!


あぁ、やっぱり楽しい。


「負けるかと思った、前からやってた?」


「趣味程度だけどね。

 変な癖もきみが指摘してくれたから、上達した気がするよ」


「元が出来てるし素直に聞いたから」


「助言の仕方が判り易いからだよ。いつの間にあんなに口達者になったのかな」


「指導しながら口説けそう?」

あ、余計なこと喋ってしまった。


「そうだねぇ……」

目を細めてこちらをちらと見るや否や、急接近して囁く。


「絶妙な距離感とボディタッチが足りないかな」

……汗臭いだけな筈なのに何やらいい匂いがする。のは、柔軟剤のせいだな、うん!


にこっと微笑むと俺のでこをぺんっと弾いて

「お互い給料も入った事だし、夕食でも賭けようか?」

とコートに戻る。

「痛っ!くぅ、絶対に負けられない、今夜は焼き肉だ!」


生憎の雨でだだ下がりだった気分もあなたの一言であっさり吹っ飛んでいった。










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