最接近

お先ですー、と風呂上がり。

返事がないと思ったらうたた寝か。

散らかり過ぎた私物の片付けを徹底的にやらせたから、疲れたんだろう。

普段から出したら戻せばいいんだよ、全く。

手近なものをその身に掛ける。


長い睫毛。

通る鼻筋。

日本率が五割以下だとこんなにも違うのか。


赤味かかった前髪をそっと退かす。

これだけ近距離でじっくりと顔を眺めるのは初かも。


ずっと待ち望んでやっと掴んだ光がそこにある幸せ。それだけで十分なのにどうしても欲が出る。


天使と悪魔のせめぎ合いの中、ふと開かれる瞳。交わる互いの視線。


攻め勝った悪魔が背中を押すが

「焦らない」

と制され、ふわっと微笑む天使は俺からするりと逃げ出した。

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