第1回

釈迦力になって勉強をした。

結果、体調を崩す。

咳が止まらない。

眠るあなたを起こさぬようそっと抜け出し、ソファで毛布にくるまる。

身体を起こさねば寝られそうにない。


一発合格は無理として次回に繋がる程度には知識を得ておきたい。そんな焦りが咳に変わる。久し振りだな。


「大丈夫?」

「ごめん、起こした」

「気にせず寝室に戻りなさい」

幾らか着込んだままでベッドに入ると枕を重ねて寄り掛かり手招きをする。


もしかしてあなたに抱かれて眠る的な?


咳込むのも悪くないなと笑うと、苦しむより幸せな寝顔を望むと言われてしまった。

「うるさくて、ごめん」

「きみはたまに言葉の選択を間違えるね」


ありがとう、助かります。

「出勤はゆっくりだから気にせず。

 僕が不調の時は代わりに抱いてね。

 念の為、明日は遅番にしてもらいなさい」


背中から伝わる温もりが咳の数を減らしていく。鼓動に合わせるように息が整う。

「ゆっくりおやすみ」

優しく囁く声が眠りへと誘う。


感謝しかない。

ありがとう、いつも、ありがとう。

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