第11話 妖精さんと過去とゆうくん

ピピピピピピピピ…

カチッ!


「ふぁ〜…」


時刻は朝の7時だ。後30分で迎えに来るからそれまでに準備をしないといけない。

そして、歯を磨いて顔を洗い髪を整え、時間になった。


『ピンポーン』


「はーい」


ガチャ!


「おはよう。準備は出来てるかな?」


ラ○ウがいた。準備?戦う準備の事だろうか?


「…えっと。おはようございます」


「あぁ、では行こうか」


「はい」


ふぅ。流石に朝イチからは龍吾さんはキツい。なんだあの筋肉。世紀末覇者だよ。


「あぁ、悪いが今日は後ろに乗ってくれ」


え?後ろ?


「?分かりました」


そして、俺が後ろに乗るとそこにはすやすやと眠る妖精さんがいた。


「悪いね、今日は起きれなかったんだ」


「あぁ。なるほど…それで、起こせばいいですかね?」


「いや、少し話をしよう」


そう言って龍吾さんはこちらを向いてきた。


「娘はな最近頑張って起きようとしてるのだ」


「そうなんですか?」


「あぁ。友達が出来たと喜んでいてな、さっきも頑張って起きようとしてたのだか…このとうりだ」


そう語る龍吾さんは少し辛そうだった。


「なぜ、こうなったのかは分からないが…心当たりはある」


ほぉ、心当たりとな?


「それは…なんですかね?」


「娘はな、誰かを待って居るのかもしれん」


「誰かを…ですか?」


「あぁ、昔普通に生活できた頃にな娘はお気に入りの絵本があった。それは『眠り姫』だ」


眠り姫、今の妖精さんにピッタリだな。


「でも、憧れだけでこうなるんですか?」


「いや、流石にそれは無い。だがな、昔娘は1度事故にあっていてな、そして、その時から少しおかしくなってしまったんだ」


「それは、どんな事故ですか?」


「あぁ、公園で遊んでいた時なんだが…」


龍吾さん曰く、その時に仲のいいお友達がいたらしい、そして、その日はそのお友達の引越しの日だったらしい。

そして、そのお友達と帰っている時に居眠りしていた車に跳ねられ命は助かったが、今の眠り姫状態になってしまったらしい。


「なるほど…しかしどうしてそれを俺に話したんですか?」


「娘の事を頼んでいるからな、少しは事情を話さないと。と思ってな」


「そう、ですか。ちなみにその時のことは結愛さんは覚えているのですか?」


「いや、どうやら事故のショックで忘れているらしい」


「なるほど…」


まぁ、小さい頃の話だからな。覚えて居なくてもしょうがないか。俺だって覚えてないし。


「さて、長く話してしまったね。では、出発しよう」


そうして、俺達は学校に向けて出発した。

そして、一応龍吾さんにも昨日あったことを説明して人目のつかない学校から近い駐車場に停めてもらった。


「ほら、起きて?学校の近くに着いたぞ?」


俺が声をかけるとうっすらと目を開けてこちらを見てきた。しばらくぼぉっ…と見ていたので俺はもう1回声をかけた。


「ほら、起きて!行くぞ」


その時妖精さんは微かに声を出した。


「えへへ、ゆうくんだ…」


ゆうくん?誰だそれは。


「何寝ぼけてんだ?俺は神原だ。俺はここから行くから起きてくれ」


ゆさゆさ…ゆさゆさ…

中々起きない。仕方ない、最終手段だ。


「…妖精さん」


「今、妖精さんって言いました!?」


起きた。妖精さんパワー流石だぜ。


「言ってないぞ?てか、やっと起きたな」


「…え?あ、本当だ。おはようございます」


「あぁ、おはよ。俺はここから学校に向かうから先に学校に向かってくれ」


「え?あ、はい…」


そうして俺は車を降りてそのまま学校に向かった。


「…ゆうくんか。誰なんだろ?」


なんだろう…少しモヤモヤするが気の所為だろうか?


「はぁ…良くわかんね〜」


俺は気の所為だと思いそのモヤモヤを無視した。

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