第3話 妖精さんリターンズ

「どうしたんです?そんな百面相をして」


「あのな、妖精さん。色々言いたいことはあるが…1番はもう少し貞操観念をしっかりしなさい?いくら同じ学校の人だからって安易にお持ち帰りされたらダメなんだよ?」


そう親切心で言ったのだが…


「妖精さんじゃありません!私の名前は花園結愛はなぞのゆめって言う名前があります!」


「うん。自己紹介ありがとう。けどね?俺が言いたいのは…」


「確か貴方は…ごんぞうさんでしたっけ?」


「おいこら、どこから出てきたごんぞうさん。びっくりだよ」


「じゃあ…佐藤さんか田中さん!」


「うん、違うね。そんなにドヤァ…って顔しても間違えてるからね?」


そして、彼女はムムム…っと顔をしかめ悩んでいた。


「もう1回自己紹介するね。神原愁だよ」


そう言った瞬間彼女は手をポンと叩き言った。


「あ、思い出しました!進藤さん!」


「うん。花園さんは人の話を聞かないね?」


そのあとも何故かコントのようなことをしながらもやっと名前を言ってくれた…


「それで、花園さん?もうあんな所で寝ちゃダメだからね?」


「分かりました!神原さん。今回はありがとうございました」


そう言い礼儀正しくお辞儀をしてきた。


「うん。どういたしまして」


そして、そのあと花園さんは家に電話をして最寄りの駅まで迎えに来てもらうことになった。


「今回のお礼に何かお返しをしたいんですが…」


お礼か…ご飯やお風呂までやってくれたしもう十分だな。


「いや、大丈夫。お礼なら十分返して貰ったからさ」


「そう、ですか?それなら良かったです」


少し納得をしていない顔をしていたが頷いてくれた。


「まぁ、とりあえず今日は遅いから駅まで送るから」


そう言い駅まで彼女を送り俺は家に帰った。

そして、準備してくれたお風呂に入りいざ寝ようと自分のベットに入って見たが花園さんのいい匂いが残っていて少し寝つきが悪かったのはご愛嬌だ。


そして、土日の2日間は何時もどうり過ごしていたのだかいつもより少し寂しかった気がする。人と会話をしながらご飯を食べたりしたのは久しぶりだったからだ。


そんなことを考えながら休み明けの今日俺はのんびりと学校に向かった。


「はよー…」


「おう。おはよ!ってなんだ眠そうだな?」


柊は朝から元気だなぁ…と思っているともう1人こっち向かって来る人がいた。


「おはよ誠くんと神原君」


そう声をかけきたのは艶のある黒い髪を肩ぐらいまで伸ばした『及川雅おいかわみやび』さんだ。同じクラスでスポーツが得意で明るい性格の為2年生の中でも中々に人気がある。

そして、そんな彼女は柊とお付き合いしている。


「おう、おはよ雅」


「はよー、及川さん」


「神原君、寝不足気味だねぇ〜」


「まぁな、色々あってさー…」


そんな感じでだべっていると予鈴のチャイムが鳴り尚ちゃん先生がやってきた。


「おはよぉーさん。よし、全員いるな。俺からは特にない。今日も勉強に励めよー…」


そう言いやる気なさそうに教室を出ていった。


そうして特に何事もなく昼休みになった。

俺はコンビニで菓子パンを買ってきていたので教室で食べようとしたら柊と及川さんと一緒に食べることになった。


「愁、また菓子パンかよ?身体壊すぞ?」


「いいんだよ。菓子パン美味しいじゃん」


「はぁ…神原君料理しなよ?流石に少し顔色悪いよ?」


「え?マジ?ってか親と同じこと言わないでくれ…」


そうして適当に喋っていると話は妖精さんの話題になった。


「そういえばよ、さっき俺妖精さん見たぜ」


「え?ほんと!?どこに居たの?」


何故か興味津々な及川さんだがちゃんと理由はある。


「誠くん今日いい事あるかもよ?良かったじゃない」


そう。妖精さんを見るといい事が起こるらしいのだ。

まぁ、俺の場合は妖精さんをおんぶして自分の家に連れて帰ったけどな!

…犯罪臭やばいな


「どうした愁?変な顔して」


「いや、少しな…」


「でもでも、妖精さんって私たちと同じ2年生なのにどうしてあまり見かけないんだろう?」


え?妖精さんこと花園さんって同い年だったのか。初めて知った。てっきり、1年生かと思ってた。

そんなことを考えているうちに話は終わったらしい。


「さて、あと2時間で帰れるぜ〜」


そんな事を言う柊を適当にあしらいながら残りの授業を受け下校時間になった。


「じゃあな愁!」


「あぁ。及川さんと仲良くな〜」


そう、2人は今日放課後デートをするらしい。別に羨ましくねぇし…ほんとだし…


「…誰に言い訳してんだろ。帰ろ…」


そう思い俺はいつもの帰り道を通り妖精さんを拾った場所が見えて来たが今日は倒れていなかった。


「流石に落ちてないよな…良かった」


俺は安堵して家に向かった。

そして、到着すると…何かが玄関のドアにもたれかかって寝ていた。


「嘘だろ…」


そう。今度は人の家の玄関でスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている妖精さんが居たのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る